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ボードゲーム合宿でやったゲーム2019

 先週末に今年もボードゲーム合宿に行ってまいりましたので,そこで遊んだゲームを紹介します.例によって写真ははいふりカメラでお送りいたします.

 今年はチーム戦ゲームとバランスゲームを比較的多くやった気がします.

メン・アット・ワーク

 めくられたカードの指示に従って建材や労働者を積み重ねて配置していくバランスゲーム.物を落とすと事故として安全証明が取り消され,3回で指名停止(ゲーム除外)になる.カードによりなされる建築指示は基本的に鬼畜であり,すごい勢いで事故が起きる.構造物の高さを更新すると勝利点をくれる頭の悪い(褒め言葉)現場監督の存在も鬼畜現場を加速する.

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バランスを保つ構造物

 写真のとおり,ヘルメットをかぶったミープル*1,組み立て式のクレーンなどコンポーネントも豪華で全体的に満足度が高い.

 バランスゲームの常として,手番終了時に一定時間待って構造物が安定した状態にあることを確認するという営みが必要になるが,このときにみんなで構造物を指差して「ヨシ!」と言っていた.ロールプレイはバッチリ,卓の合意も取れるしバランスゲームにおける指差し確認は有用ではないかと思う.

 まぁ,ヨシ!したあとに人間が足場から落ちることとか結構あったけど,「あれは現場に入る前の事故でうちの責任じゃない」みたいな処理がなされていたので,やっぱりロールプレイはバッチリだった.

キャプテン・リノ

 カードと厚紙で塔を建てるバランスゲーム.ゲーム所有者からルールとカードの説明を受けて,

「ほーん,なるほど簡単で子供でも楽しめそうなゲームっすね」

と言っていたら,所有者が

「いや……このゲームはやめよう.ルールも単純だしこんなの子供でもできるゲームだ.俺たちは大人だから……大人のゲームをやる!!」

と声高らかに宣言し,絵柄がまったく同じのクソでかい箱を出してきた.この時点であまりのでかさにフロアは興奮の渦に飲み込まれた.

 バカでかい箱を開けるとA5サイズのカードと15cmはあろうかといううすらでかいミープルが出てきて「うわぁー!でけェー!」と大興奮する3x歳児たち.そんなサイズのものをどんどん積んでいくと簡単に身長を超えてしまって著しく積みにくくなるため「身長が低いと不利……なるほどこれは……大人*2のゲームだぜ!」となった.頑張れば3mくらいまで積めるらしい.

 でかいものはクールだ,と思った.

キャプテン・ソナー

(これこそはいふりカメラで写真を撮るべきゲームだったのに撮り忘れたので写真無しでお送りします)

 チーム対戦型潜水艦ゲーム.屏風のような長大な衝立を挟んで両チームが相対し,ターンベースで交互に行動を宣言していく.相手チームの行動宣言から位置を推測し,先に相手を撃沈したほうの勝ち.なお,上級者向けにターンによらず行動宣言ができるリアルタイム制もあり.

 プレイヤーは艦長,通信士,航海士,機関長の4つの役割のうちひとつ以上*3を担当する.役割は以下.

  • 艦長:最終的な行動の決定と行動宣言をする
  • 通信士:相手チームの行動宣言から相手の位置を推測し,艦長に情報を上げる
  • 航海士:潜水艦の装備(ソナー,魚雷,等)の準備をする,艦長の補佐をする
  • 機関長:行動のたびに艦のあちこちが壊れるので,壊れても装備が動くようにダメコンをする

 このゲームのすごく良いところとして,ロールプレイがデザインにしっかり組み込まれていることがある.このゲームでは艦の破損状態が行動宣言をするうえで非常に重要(破損状態は行動を制約し,行動は破損状態を変化させる)なのだが,機関長(今後の行動を阻害しないように破損状態に介入する)と艦長(破損状態も見て今後の行動を決める)の間に航海士が挟まれるような席順となっており,極めて重要な機関長ー艦長の間のコミュニケーションが阻害されるようなつくりなっている.わざとそうしているらしいのだがこれは大変すごい.兵科将校と機関将校の二系問題とかを連想して胸熱である.

 もちろん「艦長!座標を」「座標2-B!」「復唱!座標2-B,魚雷装填,注水開始」とか「注水音!(悲鳴に近い報告)」とかそういう全人類がキッザニア*4でやりたいロールプレイもできるので安心だ.

 自分がやったときは通信士をやったのだが,相手の行動宣言を聞き逃さないようにしつつ,過去の行動宣言の記録やソナー情報の記録と照らし合わせて敵の位置を絞り込みつつ,艦長とコミュニケーションをとらないといけない.シングルコア性能もマルチコア性能も要求されて頭がパンクしそうだった.ターン制でこれなのでリアルタイム制で通信士に求められる処理能力たるやいかほどのものか.

 しかも判断ミスできないというプレッシャーがあるわけで,自分の耐性もさることながら,チームメイトにプレッシャーを掛けないという心理的安全に配慮した行動も求められる.というか,友達と楽しくゲームをやるんだからそれは義務でよいと思う*5

 とまぁ,アツくて面白いゲームなんだけど認知能力と人間性を兼ね備えたゲーマーを8人 or 6人とデカい机を揃えないと遊べない……というハードルの高さこそが最大の欠点ではなかろうか.ただ,そのハードルに見合った体験はある.まさにオンリーワン.超おすすめ.

デクリプト

 2チームに分かれて相手チームの暗号を解読する特殊な連想ゲーム.

 チーム内の一人が暗号役,残りが解読役となって,暗号役は自分だけが知っている平文(1ー4までの数字3文字)を暗号化して公開する.敵味方とも解読役はそれを復号することを目指す.暗号化アルゴリズムは「平文の文字をキーワードから連想した表現に置き換える」であり,暗号鍵(1-4までの文字と1:1対応するキーワード)は味方内で共有されている.この条件下で暗号役は敵チームの解読役を惑わし,かつ味方の解読役が一意に復号できるような暗号化を考えることになる.攻守を交代して繰り返しつつ,相手チームの暗号役が伝達しようとしている平文を2回当てれば勝ち,味方チームの解読役が復号に2回失敗すると負け.

 この暗号化が実に難しい.暗号鍵は固定&暗号文と平文のペアは解読役の予想発表後に公表される&過去に使った置き換えは禁止,というルールなので,安易な連想ばかりしているとまたたく間に鍵がバレてしまう.鍵についての情報を増やさない(=似た方向性の)連想を続けていると鍵でなく直接平文を当てられる,ひねった連想は短期的には強いが長期的にはピンポイントで鍵を特定される……とどう暗号化しても辛い.鍵を知っていないと(=つまり味方でないと)特定できないようなふわっとした表現が良いわけだが,暗号化に30秒の時間制限があるため,そんなうまい手をそうそう思いつけるものではない.持ち回りとはいえ暗号役はプレッシャーがやばいので,相手ターンや解読中に次の表現を考えておかないと辛いかもしれない.

 非常にユニークで面白いゲームだと思う.

シュタウファー

 6つの都市に自派の人間を送り込み,議席を獲得して勝利点を稼ぐワーカープレイスメント.

 コストの払い方やターン順の決め方がちょっと特殊で,ワーカープレイスメントといえば拡大再生産!みたいなこともそんなになく,淡々としている.王様(ホーエンシュタウフェン朝のハインリヒ6世)が巡察した領国では議席獲得に払ったコストが戻ってくるのでそのあたりを計算しながら手駒をぐるぐる回していく.

 ターン毎に王様がどこに行くか,どこの領国で精算(議席を勝利点に変換すること)が行われるかという重要情報がゲーム開始時にすべて決まって公開されるので,「Nターン後はどうなるか,それを見込んで今は走るかそれともしゃがむか」みたいな判断がしみじみと楽しい.そこにワーカープレイスメントならではのままならなさが積み重なるわけで,絶妙なやっていき感がある.良い.

 となって衝動買いしたやつだけど,結果から言えば買って正解.面白かった.ただ,それなりにゲーム慣れした人相手でしか遊べないゲームなので,二度目を遊ぶ機会はあるんだろうかという感じ.

 5人でやって圧勝といえる勝利を達成.途中の議席獲得では領国精算時の勝利点を目的とせず,最終精算で使う勝利点と議席ボーナスを狙いに行ったのが奏効した.巡察を計算に入れて効率よく手下を使い回せたのも良かった.勝てるゲームは良いゲーム(一年ぶり三度目).

ザバンドールの鉱山

 典型的な拡大再生産ゲームに競りの要素が入ったもの.宝石を採掘し,宝石で採掘手段や勝利点を獲得し,宝石でそれらを強化する. 3人でやって2位.やや淡白だけど面白い.『ザバンドールの笏』もそうだがこのシリーズは悪くないしそつなく面白いんだけどどこか淡白で影が薄いところがある.

 熟練すればもうすこしまともに戦えそうな気がした.

ダンジョンズアンドダンゲロス

 我々はなぜ合宿でダンゲロスのゲームをやろうとするのか?*6持ってくるやつがいるからさ……

 プレイヤーがキャラクターを保有し,協力しながらダンジョンを潜っていくゲーム.『ディセント』っぽい感じというかGM不要のTRPGっぽい感じというか. スマートフォンQRコードを読み込むとWebアプリが起動し,ノベルゲーっぽい感じでシナリオが提示される.イベントの処理(どういうモンスターが出てくるか)もそのWebアプリが教えてくれる.ガジェットとの連携は流行りの感じだけれど,なかなか力が入っており,ちょっと感動した.

 ルールはダンゲロスらしい大味さというか,サイコロの出目と固有能力でなんとかなる!というやつで,だいたい酷い(褒め言葉).「このルールの説明がない!」「巻末のサマリにだけ書いてあったわ……」みたいな事が多く,その上でバランス(特に時間制限)が普通にシビアなので普通にタイムオーバーで負けた.D&Dや世界樹の迷宮なら絶対にやらないようなクソ迂闊ムーブで悶死したので悔しかったが,シビアでないダンジョンなんて玉葱の入ってない牛丼みたいなもんなので満足いく負けではある.楽しかったしいずれ再挑戦したい.

Wealth of Nations

 私自身はただのプロレタリアートだが,一年に一度くらいは資本家の気分が味わいたいのでやった.

 どういうゲームかは 去年の記事参照. maruiboushi.hatenablog.com

 以下はプレイログ.

 4人プレイ.なんかスタートタイルで資本と電力の生産タイルが残ってたので取った.毎回ワンパターンな戦略(資本と電力から銀行を目指す)だと思うけど,遅めの順目で残ってたわけで,取らない勝ち筋が見えないし取るしかなかった.スタートプレイヤーが食料ー食料の生産タイルを取ったり,労働力を取ったプレイヤーが生産できるのに生産しなかったりと,場は大荒れに荒れた.ボジョレー・ヌーヴォーのごとく「つらい」「今までのプレイで一番つらい」「最高につらかったと言われる3年前のWoNに匹敵するつらさ」と,だいたいやるたびにつらいが今回もやっぱりつらい.

 労働力が生産停止で暴騰したため食料プレイヤーが労働力に噛みに行って,生産した労働力を使って旗を置ききってゲーム終了.資本独占&電力もそこそこ高かったため堅調に推移,生産タイル数も現金もそこそこ稼げてはいたもののやはり生産タイル数で追いつけず4点差で2位.もう1R回ってたら……と思うけれど,そもそも終了の権利を握られた時点で勝ち目はなかったわけで.善戦したにはしたが,これだけ有利な条件で馴染んだ戦略を使ってさえ2位に甘んじたというのはやっぱり悔しい.勝てるゲームは良いゲーム,悔しいゲームも良いゲームだ.

 今回の教訓としては以下.何を今更な話ばかりだけど,改めて実感.

  • Win-Winで回っていくゲームなので,意図的な生産停止(Lose-Lose)はかなり不利になる
  • 価格の吊り上げは吊り上げすぎると新規参入を招くので危険
  • 労働力(赤)は序盤高騰,中盤暴落,終盤でちょっと戻すという値動きをしがちで交換価値が微妙な資源という印象なのだけど,自家消費してゲームの終了権を握る(あるいはそれをプレッシャーとして利用してゲームを有利に展開する)という勝ち筋がある
    • 過去にそんなような議論をした記憶はあるが,赤をからめた速攻がここまで綺麗に決まったのは初めて見た
  • 4人で遊ぶのとても楽しい.5人以上は狭すぎる.3人だと交渉が微妙.

Trans America

 北米大陸に線路を引くゲーム.アメリカ全土に散らばる目的地(プレイヤーによって異なり,秘匿されている)を目指して線路を引いていき,最初にすべての目的地にたどり着くことを目指す.相互乗り入れによって他プレイヤーの引いた線路を使うのが勝利の鍵.共有リソースを利用して秘匿された目的地を巡回するという点で『エクスペディション』に近い手触りがある.

 デカいゲームボードと鉄道*7というテーマに「すわ,重量級か!?」と戦慄が走るも,インストもプレイも軽く,人数のバリエーションも効く優秀なゲーム.今年の「単純なルールながらも大当たり」アワードはこれ.

なお,アメリカ中の都市の名前が出てくるのでちょっぴりアメリカの地理に詳しくなれる.シアトルってあんな端っこだったんだなぁ……

光輝く高輪アンリミテッドエターナルゴールデングレイテストスーパーストロングゲートウェイ(仮称)

 駅を命名するゲーム.自分の番が来たら手札から駅名の構成要素*8が書かれたカードを場に出していき,それら全てを繋げた駅名を一息で二回言う(駅名のアナウンスは2回繰り返すものなので).これを繰り返していくと駅名はどんどん長く言いにくくなっていく.噛んだり息継ぎしたりするとお手つきとなり,お手つきを2回やったプレイヤーが出るとそのプレイヤーの負けでゲーム終了となる.

 兎にも角にも滑舌と肺活量が必要となる.急に早口になるオタクに優しく,早口になりすぎて噛むオタクに厳しいゲームである.

 語呂が良い部分に余計な構成要素を差し込んで噛みやすくするいう高度な戦術もあるらしいけれど,いかに素敵で親しみやすく住民の理解を得られる駅名にするかが大切だと思う(「ストロング」と書かれた札を「ゼロ」の前に差し込みながら

ソクラテス

 偉人を召喚して能力値でバトルし,聖杯を獲得するゲーム.偉人は左腕,顔と胴体,右腕,の3つのパーツに分かれており,それぞれに能力値と名前の一部が書かれている.召喚するときはとりあえずそれぞれのパーツがあればいいので,「ニコポレス一世」(ニコラ・テスラの「ニコ」,ナポレオンの「ポレ」,エリザベス一世の「ス一世」)等の「キメラティック偉人バトル」の名にふさわしいトンチキなアレが出てくることになる.

ルールはちょっとわかりにくかったりとかあったけど,面白さの本質はそこにはないのでいいと思う(ナイチンゲールの「チン」をどのように使うと面白いのか考えながら

コロレット

 同色のカードをたくさん集めると点が増えるアブストラクトゲーム.ただし,種類が増えすぎるとペナルティになるので,そこに取るや取らざるやの駆け引きが生じる. 妨害ありチキンレースありでなかなか奥深い.

Fab fib

 三枚の数字カードでできるだけ大きい数字を作り,裏向きにしながらぐるぐる渡していくブラフゲーム.数字の宣言は受け取ったときより大きなものにせねばならず,嘘をついてもよい.

 これまたルールが単純でコンポーネントも小さく,そこそこ楽しい.しかも大人数で遊べる.次買うならこれかなぁ.

Quarto

 変則4目並べ.色(白 or 黒),高さ(高 or 低),形(円筒 or 四角柱),穴の有無が異なる2^4=16種類の駒があり,これを4x4のマスに交互に並べていく.前述のいずれかの要素が同じコマが4つ並べば勝ち.ただし,置くコマは相手が指定するというのが面白い.

 頭を使ううえに,人間特有の要素の見落としが発生するのが面白い.その点で1vs1のゲームだがギャラリーも十分楽しめる.

 ギャラリーをやりながら「アッこれは自分は絶対勝てないやつだな……」と思った.実はこのゲームだけやっていない.

*1:ヘルメットはもげやすく事故の要因となる.鬼畜

*2:大きい人の意

*3:4vs4なら1つ,3vs3は兼務あり

*4:「大人のキッザニア」?お前がキッズになるんだよ!

*5:自分は熱くなりがちで常にできてるわけじゃないけれど,それでも……

*6:前回のダンゲロスゲーは去年の記事参照 ボードゲーム合宿でやったゲーム2018 - Aloestelic Site 3rd Edition

*7:鉄道のゲームは大体重い

*8:「光り輝く」とか「ゲートウェイ」とか

艦これの同人誌を作るまでに読んだ19冊+α

 昨年の冬コミで艦これ×英国艦使用人小説同人誌『お嬢様のこと』を出した.

 かなりニッチな本にもかかわらず幸いにも完売し,部数の見通しが甘かったためご好評をいただいて重版した.

www.melonbooks.co.jp

 小説は学術書ではないので参考文献というべきものはなく時代背景無視の雑な設定もたくさん入れてはいる.しかし,それでも嘘を飾るテクスチャは様々な本からいただいたものであるし何らかの形でリストを残したほうが良いのではと思った.また,「同人誌を作る際に資料はこれこれを使いました」と記録を残すケースでも,タイトルを列挙した参考文献リストあるいは単一の本の書評として書かれるのが主でコメント付きのリストという形にされることは珍しいように見える.……といった理由から,読んだ本と見た映像作品のリストをテーマ別に分類しコメントともに残そうかと思う.

英国の使用人

 侍女を語り手として選んだので,英国の使用人がどういうものだったかを調べる必要があった. これに限らずであるが,扱われている年代は幅広い.きちんと時代考証をやるならそこは当然留意する必要がある.私は気にせず食べられそうな設定は全部入れた.

英国メイドの世界

英国メイドの世界

英国メイドの世界

 これなしには語れない入門書にして決定版.参考資料には十分で,これより先は趣味と研究の領域と思われる. 情報量(600ページ超!)もさることながら,職種ごとに整理されているのが良い.ブックガイドが硬軟取り混ぜて楽しい&頼もしいのも重要. 読み終わる頃には更に踏み込むための知識と手がかりが手に入っているだろう.

 この後,調査し文章を書き進める上で海図であり母港となった本である.

おだまり,ローズ 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

 副題の通りの内容.語り口やエピソードの積み重ねに強い影響を受けた.登場人物は皆生き生きとして文章はウィットに富んでおり,読み物としても非常に面白い.個人的には2018年ベスト本.

日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 このエモさ,ノーベル賞級!(とても文化的なキャッチコピー)

 イギリスの荒野で文学賞の権威につられて読みはじめた軟弱者はエモの大波に飲まれて語彙を失い,保護されたときにはバスタオルにくるまれ焦点の合わぬ目で「エモい……エモい……」と呟くだけの哀れな生き物になる.執事ものの金字塔.

図説 英国メイドの日常

 豊富な図画を添えてメイドの暮らし,しきたり,当時の文化について書かれている.あたりまえのことだが,年代が書き添えられているのが非常に助かる.

 全般にふくろうの本シリーズは絵や写真が豊富かつそこに対応した挿話が書かれている資料集スタイルなので,「面白そうな設定やエピソードはどんどんつまみ食いする」というスタイルにはもってこいである.もちろん通して読んでも面白い.

英国の上流階級

 貴族のお嬢様を書かないといけないので,貴族の生活とはどのようなものだったか調べた.特にお嬢様は学校に通っている設定なので,そのあたりもケアしたい.

階級にとりつかれた人々

 ここから入った.どういう階級があって,どういう特徴があってというところ,とりあえず出発点の枠は押さえた感がある.

 清潔さ,丁寧さ,慇懃さといった洗練はミドルクラスの特徴であり,アッパークラスおよびアッパーミドルクラスはそれを忌避して線をひこうとした,という部分については(非常に興味深いものの)いわゆる「お嬢様」の通俗的理解と衝突する.これについて今回は我々日本人にとって容易に受容可能な「洗練されたお嬢様」概念を採用した.

イギリス紳士のユーモア

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

 ユーモアについて書かれた頁は実はそんなに多くなく,イギリス紳士の説明に割かれるところが多い.紳士の養成機関としてのパブリック・スクールについての記述あり.

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

 著者の思い入れが奔りすぎて話があっちゃこっちゃ行くな……というところはあるが,その熱意で詰め込まれた数多のエピソードにはインスピレーションを掻き立てられた.

図説 英国レディの世界

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

 良妻賢母,ミドルクラスの良い奥様を目指すには,という話が多い.すこしターゲットを外してしまったが無駄ではなかった.

図説 英国貴族の令嬢

 『英国レディの世界』が当たらずとも遠からずだったので貴族のお嬢様ならこちらのほうがテーマに近いかと思い買う.思惑通り.

 地位と敬称,呼称の対応表(伯爵の長女に対してLadyとつけるべきやMissとつけるべきや,等)が見っけもんである. 二次創作で誰が誰を何と呼ぶかというのは非常に気を使われるところであるし,呼び方で人間関係を表現できるので是非に押さえておきたい.

ダウントン・アビー

嵐の予感

嵐の予感

 映像というのは強力で,特に調度や立ち振舞いといった部分が強い.文章で描かれない隅々にまで情報があり,文字で読んだ知識をいい具合に補正・補完してくれる.また,人気のドラマシリーズに今更なに言ってんだという話だがドラマが面白い.アマプラで見られるので実質無料だというのも強い.

パブリック・スクール ――イギリス的紳士・淑女のつくられかた

 著者自身の経験に加えて,学校文学(学園モノ……というとちょっと違うかもだが)を引きながらパブリック・スクールとその内部の習慣や文化について紹介している本.女子のパブリック・スクールについても一章が割かれておりキマシタワーを建てる際の参考になる.

自由と規律 ―イギリスの学校生活

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

 パブリック・スクールが持つ厳しくも素晴らしい特質について著者の経験したエピソードを紹介して書かれている.芯の強いお嬢様を書きたいならぜひ買ったほうが良い.

 やや古い本でしかも著者の少年時代をベースに書かれているので,現代物をやりたいなら注意.私の場合は時代物なのでむしろウェルカムだった.

英国の海軍

 艦これはお船のゲームなので(たぶん).その背景について知識を深めるのは無駄にはならないはず.

女王陛下のユリシーズ号

 何度めかの再読.何度めかの感涙.名作名作アンド名作.

 影響されて同人誌の装丁をかなりハヤカワNVリスペクトな感じにした.あの半端極まりない高さを除いてだが.

Warspite

Warspite (English Edition)

Warspite (English Edition)

 QE級戦艦のHMS Warspiteについて書かれた本の中でも現在容易に入手でき,かつ非常に詳しく書かれたもの.Kindle版が安価.

 私は英語力と根気がゴミなため途中で投げた.だが,冒頭で歴代のWarspiteについて述べられていて,この部分だけでもインスピレーションがモリモリと湧いてくる.元はとった(負け惜しみ).

ダンケルク

 映像のパワーに殴られて「海は……海は広いな……」という感想が残った.ダンケルク撤退が英国民統合の象徴であり誇りでもある(「負け戦」をそう言うあたりが本当にいい)という話もあって,「祖国だ」の一言に心をボコボコにされる.凄い映画だ.

 海による分断,たち現れる戦場の奇跡という構図やラストの盛り上げ方はかなり影響された.

Rule Britannia!

Rule Britannia!

Rule Britannia!

  • The Central Band of the Royal British Legion & Captain David Cole
  • クラシック
  • ¥1500

 作業用BGM.表題曲はもちろん,みんな大好き"The British Grenadiers"や "Scotland the Brave" もあるぞ.

英国の女と女の感情

 百合は語るものではない.

荊の城

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

 読みましょう.

プリンセス・プリンシパル

第1話 case13 Wired Liar

第1話 case13 Wired Liar

 見ましょう.

エディトリアルデザイン

 表紙絵はできる人にお願いしたけど,組版やカバーデザインの仕事は残った.無論,DTPなどやったことはない.

小説同人誌のためのレイアウトデザイン

seiyo-shobo.booth.pm

 神のごとき同人誌.これ一冊で読むに堪える小説同人誌が作れる.DTP用語の説明からしてくれているので最初の一冊に良い.永久保存版である.

 特別付録でInDesign用のクックブックがあってこれがまたスクリーンショット豊富でわかりやすい.InDesignの体験版をダウンロードして途方に暮れた状態からスタートして一時間くらいでカッコいい版面ができる. Adobe CCに入っているようなソフトはどれも高機能で,その分野の概念から掴まねばならない人が一から理解して利用するのは困難である.そのため丸写しで様になる設定例は大変ありがたい.

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

 値札やお品書き等のファシリティ(?)については労力をかけて完璧にするよりも,無難なものを作りたいと思っていたので買った.期待していたことが書いてあった.平易でよい.

その他

夏の夜の夢・あらし

 HMS Arielを出すので.風精エアリエルに関する引用をやりたくて読んだ.しかし,結果としてあまりハマる台詞はなくて見送り.これ以外にもいくつかエピグラフ目当てで古典を読んだけれど,なかなかしっくり来るというのはなかった.しかし古典というやつは読んで見れば「いける,これは今でもいける」というのが結構あるもので,良い機会だったと思う.

艦隊これくしょん -艦これ- コミックアラカルト 舞鶴鎮守府編 十六

 資料というよりはモチベーションに近い物だが大きなリスペクトを込めて.これの最後に載ってる今井哲也先生の漫画が非常に良い.2017夏イベントを漫画にしたものなのだが,道中をほんの数コマでまとめる鮮やかさと,強く気高いWarspiteが良い.奇しくも同じイベント,同じ艦娘がテーマなのでリスペクトせずにはいられない.

 

 いざ同人誌を書いてみると,世の中には知らないことが多いものだと痛感する.図書館などももっと活用すればよかった.

ボードゲーム合宿でやったゲーム2018

 週末にお友達と温泉でボードゲーム合宿をしてきましたので遊んだゲームについて報告します.

 なお,記事中の写真はおっさんの手足の写ったやつとはいふりカメラで撮ったやつしかなかったのではいふりカメラのものを使用しています.可愛らしいはいふり画像をお楽しみください.

Wealth of Nations

 個人的には世界で一番面白いと思っているボードゲーム.農園(食料)・発電所(電力)・学校(労働力)・鉱山(鉱石)・資本(資本)・銀行(現金)の6種類の生産設備と資源を所有し,生産し,貿易して金を稼ぐ.席順以外のランダム要素なし・完全公開情報・拡大再生産&貿易バーリトゥードというハードコア資本主義ゲームである.
 この手の重量級ゲームにしては少ないコンポーネントと単純なルールで需給バランスや通貨供給量によるマクロ経済への影響を表現できている秀逸なボードゲームであり,「どこかで見たぞこの経済情勢」という状況がプレイのたびに立ち現れるのが魅力.「作ろう君の失敗国家!」を合言葉に一家に一台ほしいくらいの良ゲーなのだが,現在ではプレミアがついておりPS4 Proみたいな値段になっている.おのれ資本主義.

 今回は6人プレイで発電所を取ってゲームスタート.しかし,タイルを近くに配置されて土地がなくなり,頼みの綱の電力事業にもどんどん参入されてひどい状況に.中盤に血を吐きながら債券を乱発をして金融業に参入し現金をウォンウォンと印刷しだしたところ状況は劇的に改善.電力の高騰にも助けられて終盤かなり巻き返すことができたがタイで2位という結果だった.結局土地の狭さが最後まで効いてタイル数が伸び悩んだのが敗因か.もう一ラウンドあれば勝っていたのになぁ.
 終盤まで人件費が高騰していたにもかかわらず学校への参入者がほとんどいなかったため,勝ったのは学校を独占していたプレイヤーだった.善戦した方ではないかと思うし,電力→金融という好きな戦術を決めた上で「工場建てるより金刷ったほうが強くないですか?」という金満ロールプレイもできたので,2位ではあったものの概ね満足の行く2位であったと思う.

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 写真は中盤のもの.私が担当するAnglica(英国相当:白地に緑十字のフラッグ)は決然として現金印刷業務(銀行:紫色のタイル)に邁進している.

SCYTHE

 1920年台の架空の東ヨーロッパを舞台に二足歩行機械(メック)を用いて覇権を争うゲーム.キービジュアルがドチャクソかっこいい上にコンポーネントが凝っている.メックや民族指導者の精緻なプラスチックフィギュアが入っている上に木製のミープルも勢力ごとに形が異なっていたりととにかくゴージャス.ボードも工夫が凝らされており触っているだけで多幸感に襲われる.

 ゲーム内容としてはアクションを選択してメックを配備したり移動したり生産したりしてVPを稼ぐもの.その辺りはオーソドックスな重量級ゲームと言ったところか.とにかく要素が多いのでプレイ時間がひどいことになりそうなものだが,プレイヤー間での干渉が思ったよりないので意外とスピーディにゲームが展開するのがありがたい.

 5人プレイでポーランド風の国を担当.特殊効果が遭遇イベントカードの効果を2つ選べるというものだったので,メックを配備して移動力を増やしつつ指導者があっちこっち行って遭遇イベントカードをめくるプレイに終始.ただ,ドイツ風軍事国家がゲームを終わらせに行ったので普通に追いつけず負けた.2位だったものの,後からVP計算のルール間違いに気づいたから実の所はたぶん3位以下だったと思う.
 面白いには面白かったのだが,要素が多すぎてどの要素がどこまで勝利に貢献したのか(あるいはどの要素が勝利に貢献できなかったのか)がよくわからなかった.もう少し色々遊ぶとまた変わってくるのではないかと思う.

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写真は点数計算時のもの.

戦闘破壊学園ダンゲロス ボードゲーム

 同名小説およびその関連作品をクラウドファンディングボードゲーム化したもの.あらゆるテイストが狂っており下品で下劣で最低(以上4ついずれも褒め言葉)なのだが,それはいずれも原作の忠実な再現によるものである.

 探索フェーズと決戦フェーズに分かれており,探索フェーズで集めた仲間の魔人を並べてゲームの勝者を決めるべくバトルロイヤルの決戦フェーズを闘う.Lvの高い魔人ほど強く,倒した魔人を仲間にするという構造上どうしても探索フェーズは正のフィードバックがかかるのでプレイヤー間で差がつく,おまけに決戦フェーズに参加できる魔人の数も探索フェーズでボス魔人を倒した回数が多いほど多い.
 これでは流石に一人が強くなりすぎてバランスが悪かろう……と思いきや決戦フェーズはバトルロイヤルなので優勝候補と目されるプレイヤーは集中的に攻撃されてひどい目にあうので勝手に辻褄があう.また魔人の特殊能力がLv問わず基本的に強く,所詮はダイスゲーなのでジャイアントキリングが連発する.大味ながらもバランスが取れてしまうのはこのあたりのゲームメカニクスも貢献していると思われる.いかにもダンゲロスらしくてとても良い.

 4人で遊んだ際は探索フェーズも順調に進み,決戦フェーズにおいても最大のライバルと目されたプレイヤーが早々に全滅.相手はLv1と2の魔人のみでこちらは戦闘向け特殊能力を有したLv3という「勝ったな」「ああ……」みたいな状況になったのだが,お約束のように出目で負けた.しかも相手は「まるだし刑事」.クソすぎる(褒め言葉).

進撃の巨人 ボードゲーム

 同名の大人気漫画のゲーム化.巨人側プレイヤー1人対人間側プレイヤー残り全員の特殊な対戦ゲーム.人間側プレイヤーはダイスを振ってその目を使いつつ巨人を倒すことを試みる.直立する巨人や組み立て式の塔,専用のダイスを始めとするコンポーネントインパクトがあるが,実際はただのトークン置き場でありこれ平面でよくね?感が漂う.でもな,平面機動じゃカッコがつかねぇからよ……そのコンポーネントは必要なんだよ……

 ゲームは5人でやって,まぁなんか普通に巨人を倒せた.

 余談だが,グループ内で『進撃の巨人』を読んだことがあるやつよりも『戦闘破壊学園ダンゲロス』を読んでるやつのほうが多かった.治安が悪い.

プールパーティ

 プラスチック製のカードを指で弾き,バネで支えられた受け皿にたくさん載せたら勝ちというゲーム.ルール説明が1分で終わる.
 平均年齢3x歳の男性(全員素面)が4人でキャッキャ言いながら一心不乱にプラスチック製のカードを弾いている様はちょっと頭がアレしてしまったのかなという光景であるが,プリミティブな面白さがあるゲームだから馬鹿にしてはいけない.欠点はプリミティブすぎて3分くらいで飽きること.

ペンギンパーティ

 手札から5種類のペンギンカードをルールに沿ってピラミッド状に並べていき,できるだけ多く置くことを目指すゲーム.場の空気を読んでカードを出していく必要があり,妨害は必要だがあまり妨害しすぎると自滅するという定番のジレンマがある.今年の「単純なルールながらも大当たり」アワード*1は間違いなくこれ.

ナショナルエコノミー・メセナ

 去年やったカードゲーム『ナショナルエコノミー』の新版.拡張ではなく単体で遊ぶ用.ルールは前とほぼ同じ.ワーカープレイスメントゲームだが労働者に賃金を払うのが辛い.
 3人プレイを2回やって両方とも大聖堂を建設し勝利点トークンを稼ぎに行くが,いずれも2位.『ドミニオン』でも思ったけど自分は勝利点トークンという単語に過分のロマンを見出しているように思える.

顧客が本当に必要だったものゲーム


 顧客の要求に応じて情報システムという木を伸ばしていくゲーム.だいたいカオスなシステムができ,担当者の評価は「やった感」*2で決まるというリアル.顧客という体で出てくるインターネット有名人のイラストが上手くていちいちイラッとするのだがイラストを見てだいたい「元ネタこいつだろ……」って分かるような人間はインターネットのやりすぎなので直ちに野菜と運動と瞑想が必要だと思われる.恐ろしい恐ろしい.

 今回の合宿で他のゲームでは一位になれなかったが,これについては圧勝してシステムエンジニア(システムをエンジニアリングできるとは言ってない)の意地を見せつけることができた.勝てるゲームは良いゲーム.忘れちゃダメだよ.

*1:一昨年は『ピット』去年は『ReCURRRing』

*2:このゲームにおけるVPはそのように呼称される

2017年のアニメ個人的ベスト

順調に虚無に近づいていったが,働き方改革で余暇が少しずつできつつあるので,来年はもう少し虚無から離れるようにしたい.

第1位:プリンセス・プリンシパル

完全勝利.何兆点あるのこれ.

久しぶりに自分の趣味にクリーンヒットするアニメを見た.大体5年おきにこういうスマッシュヒットが来る(2001年に『NOIR』,2006年に『シムーン』,2011年に『魔法少女まどか☆マギカ』)ので,そういうものなのかと思う.

こういうスタイリッシュで画面が暗くてビターなストーリーと顔の良い女同士のデカい感情があって梶浦由記の音楽が大音量で流れるアニメを待っていたというのもそうだが,キャラクターの魅力,特にプリンセスとアンジェの関係性に強く惹き込まれた.こういったものはそのカップリングで二次創作が出回ることも多い.絵だとわりと「いいよね」って思うものがあるんだけど,マンガや文章となると急に偏屈になって「お前にプリンセスのなにがわかるんだよ……」というブーメランをブンブンと投擲したくなる.

今年の煩悩今年のうちに,ということで,私の中でのアンプリの書き下しを試みようと思う.

まずアンジェからプリンセスへの感情,これはCase 20で明言されたように「敬意」だ. たぶんこの敬意は尊敬の敬と隔意の意をあわせて出来たものである.運命のいたずらにより自分が生きるはずだった人生を生きた女性,自分が考えていた苦難多き道を(より困難な状況の中)ほぼ完璧に歩んでいる人間への尊敬.それはもちろん能力についてのところもあるだろうが,何よりもそれを成し遂げさせた意志に対する尊敬を大いに含むものであろう.そしておそらくその原動力が自身であることに,アンジェは何とも言えない罪悪感か居心地の悪さを覚えているように見えた.そのあたりを押し込めたのが「敬意よ」という言葉であったように思う.

次に逆向き,プリンセスからアンジェへの感情はちょっといい言葉がない. プリンセスからシャーロットへの感情ということになればこれは良くて「半身」,実際は「自分自身」に近いのではないか.プリンセスの行動のうちどこまでがプリンセスの意志で,どこまでがシャーロットの意志なのかというのがよくわからない.もしかするとプリンセスの意志というのは,「内面化・理想化されたシャーロットの意志を貫き通すためにあらゆる努力を惜しまない」ことなのかもしれない.このクッソ重い感情を糧に覇道を邁進していくプリンセスははっきり言って最高に魅力的なキャラクターだと思うし,この一点だけでさえ今年最高のアニメに届くポテンシャルを秘めている.

では,プリンセスの今のアンジェに対する感情だとすると,これはよくわからない.同志であり共犯者というのもあるだろうが,Case 23ー24を見る限りはやはり甘えというか,当然自分と同じ考えに至る,必ず助けてくれるという確信に近い思い込みがあるように思われる.だってシャーロットは自分だもんね.仕方ないよね.

ではアンプリはキテルのか.両者の間に恋愛感情はあるのか.たぶんない.でも上記のデカい感情が何かの拍子に恋愛感情と同じ位相になってしまって誤認識するシチュエーションはあり得ると思うし,それは美味しいと思う.

アンプリにしか言及してないが,それで持っているエピソードは決定的に重要なエピソードを含むものの全体から見れば半分もない.ドロシーとベアトとちせと,他にも多くの魅力的な登場人物がいて魅力的な人間関係があるのだけれど,そこは読み込みが足らないのでまだうまいこと言語化できていない.

そしてその外側にはきちんと組み上げられた技術があり社会があり政治がある.その中のダイナミズムとして本編のストーリーがある.そこもまだ全然読み込みが足らない.

ああ,全く,私はこのアニメのことがよくわからない.「尊い」に逃げずに,もうちょっと何回か見ようと思う.

その他

次点は『けものフレンズ』.理由は人類の基本的な価値が詰まってるから. 賢くあることと他者への思いやりがあること,これらは本来は相反するものではないはずだ.でも,「わーい」「たーのしー」といった無知で無垢な雰囲気を出さないとその辺の基本的な価値を受け入れることを「嘘くさい」と思ってしまう.それはよくないことだと思う.

ほかもシンフォギアAXZとかナイツマとかアルタイルとか見たものはどれもそれなりに面白かったけど,プリプリが全部持ってってしまった.

ボードゲーム合宿でやったゲーム

先日,ボードゲーム合宿で結構ボードゲームをやったので感想を書く

Diceforge

ダイスの面を購入し組み替えていく拡大再生産ゲーム.

かなり面白かったのだけれど,卓を囲んだ人間の言動が怪しかったのが明確な加点要素になっている.本当は「太陽の力」と「月の力」なんだけど,みんな精神が中学生だから「光のパワー」「闇のパワー」で定着していた.おかげさまで「闇のパワーが高まってきた」とか「光と闇が合わさり最強に見えるので24点」といった,ポップでコクのある言動が楽しめた.

ゲーム自体は中級者向け(それなりにルールは単純で頭を使うわけでもないが,ゲーム慣れしていないと要素が多すぎてつらそう)で,大味なところもあるけど,ダイスを組み替えたり振ったりというフィジカルなとこが楽しいから楽しい.

そしてコンポーネントが凄くいい.偏執的とさえ言って良いこだわりで,すべての要素に収まりどころがあるようにコンポーネントが作ってある. こう,みっしりと匣に詰まっている感じですっかり欲しくなってしまった.でも箱がでかい.

クレムリノロジー

粛清や勲章などのイベントで変化するソ連高級幹部の序列を当てる推理ゲーム.公開情報と機密情報を総合して推理する.

非常に楽しいRPG.起きた事象と現実世界のイベントと唐突にリンクしたり色々想像が湧いてきて楽しい. 苦労して手に入れた機密情報が一瞬で公開情報になったりする無情さがインテリジェンスっぽい(らしい). 公開情報と同じ機密情報ばかり回ってくる状況がOSINT呼ばわりされてて草.

ただ,ゲームとしての面白さがランダム要素に左右されるところはある.読み切れてしまっても面白くないし全然わからず当てずっぽうになるのも面白くない. この間にある楽しいレンジにプレイヤーの資質と出目でどの程度とどまることが出来るのかってのがまだよくわからない.もうちょっとやりこめば見えてくるのかもしれない.

これ以上は情報不足だからランダム,というところまで読めてしまうとゲームとしての面白みが減ってしまうので,プレイヤー間の処理能力に大きな差がない限りは最終ターンだけでなくターン毎の時間制限を適切にセットしたいところ.

ぱんつぁー・ふぉー 2

ガルパンのウォーゲーム.Area to Area型のマップで小隊単位の戦車戦をする.

一回目はカードの引きがひどくてダメだったんだけど,二回目やったら接戦な上にまほエリだったので滾った.

「冬の寒さを表現するときに,どんな美麗なグラフィックよりも1移動力多くかかるほうが雄弁なこともある」という趣旨のゲーム評論を読んだことがある.まさにそれだった.完全なまほエリだった.隊長の盾となるエリカの姿がありありと見えた.約束された勝利のまほエリだった.そもそもアニメですら供給を絞られ気味のまほエリをゲームとして己の判断の下に再現できるのである.とてもイマーシブな体験で,とてもエキサイティングだった.

ゲームとして楽しい上にプラスアルファでロールプレイの楽しみがあるお得なゲームだといえる. ロールプレイとしての楽しさを引き出すのならガルパンへの愛がそれなりに必要となるだろうが,劇場版を複数回見に行ったくらいのごく平均的な愛があれば大丈夫だと思う.

ツォルキン

時間軸での計画性を要求されるワーカープレイスメント.ターンベースで駆動する歯車コンポーネントがイカス.

ワーカープレイスメントは失敗を噛みしめるゲームが多いが,ツォルキンは常に失敗を噛みしめるゲーム展開が続く. 「しくじった」「ああしていれば」という後悔と敗北を巻き込んで歯車は回っていく.

こんなにしくじりまくっているのは,Nターン後の行動について精緻な計画を立てるのが苦手という私の性格によるものである.方向性を決めて丼ぶり勘定で進みつつ微修正を重ねてやっていく,というスタイルが通用しない.つまらないゲームではないが得意ではない.

ReCURRRing

場札よりも強い手札と場札を交換し続けていくカードゲーム.枚数と数字の2つのパラメタで強弱が決まる.

シンプルなのに独創的で奥深い.手作りをするかそれとも利益を狙うかという判断の醍醐味が楽しめる.ルールも単純で教えやすいしカードゲームではピット以来の当たりかもしれない. 盆正月に麻雀が立つご家庭には間違いなくおすすめできる.

ループの中で2つの変数が増えたり減ったりして条件を満たして止まるところがちょっと計算機科学っぽい感じがあって萌える.

何にせよこれは遊び足りないところがある.もうちょっと遊んで判断の感覚をつかみたい.

ナショナルエコノミー

ワーカープレイスメント・カードゲーム.色々珍しい.

つらーい!たーのしー!

ワーカープレイスメントは苦しみを抱えて生きるゲームが多いが,これも常に苦しみを抱えて生きるゲーム展開が続く.維持費で血を吐くのがワーカープレイスメントの醍醐味である. では給料の要らない労働者は経営者の永遠の夢なのか?というところで否となるのがこのゲームの面白くもユニークなところ.

独創的な「家計」のメカニズムがとても良い.労働者への賃金が市場(家計)を形成するという見立ても好きだけど,家計にあるお金の量で駆け引きが生じるのが良い.供給が少ない内に供給したほうが有利,という需給による価格変化を二値で実現してると言えなくもない.WoNで調教されたからってのもあるけどこういう市場メカニズム好きだなぁ.大好き.

みんなまだそんなにやりこんでなかったので,労働者一人が出せる利益って点でクレバーになりきれない(終盤は原則として建設よりも家計に売るほうが効率がいいんだけど建てちゃう)ところがあって,この辺はまだロマンという名の錯誤が生きてたなぁという感じではあった.手札のマネジメントが難しいのでもうちょっと練習したいところ.

最後にこれは好き嫌いなところもあるけど,箱がコンパクトなのがとてもいい.アメリカも都市部はめっちゃ家賃高いらしいけど何でメリケンのゲームはあんなに箱がでかいのか? 住宅事情への心配りもニクい,天晴な国産ワーカープレイスメントだった.

ICE COOL

ペンギンを指で弾くゲーム.コンポーネントがよい.しかし,指が痛い.

ナンジャモンジャ

変な生き物に付けた名前を覚えるゲーム.若いやつが強い(結論)

Dice Stars

ダイスを振って選び,出目とダイスの色を用紙に記録していって上手いこと用紙を埋めた人が勝つゲーム. この合宿でね,私は全然勝てなかったんですよ.だいたいどのゲームも2位以下でね.でも,これは1位になれたんですよ. 勝てるゲームはいいゲームですね.

2016年のアニメ個人的ベスト3

 大晦日をもちまして今年のテーマが人間に決定しました.早く人間になりたい.

第1位:この世界の片隅に

素晴らしいアニメだった.

感動したというと確かに感動したのだけれど,最初に思ったのは「ああ,人間がいる」ということ.次に,人間は生活をするということ.そして,ユーモア(humor)の語源は人間(human)と同じであるということ.

そこにいない人をいるように見せる,世界や人間とのインタラクション,振る舞いを通して登場人物に魂の重さがあると錯覚させる.それが萌えアニメにとっていかに大切なことであるか,いかに難しいことかというのは常日頃から思っていた.

そして,本作には人間がいた.なんでいたのかはわからない.緻密なリサーチがもたらしたのか,優れた演技演出がもたらしたのか,それは正直わからない.

でもとにかくいた.いるものはいるのだ.大勝利.

そして,これまたすごいアニメだと思うのは,見た人が言うことがまちまちなのだ.見た人が,己の知識,体験,あるいはイデオロギーに引き寄せてこの作品を語り,なにがしかの形で褒めている.
そうやって全てが違うからこそ,多くの人に薦めたくなる.
十代の人が,六十代の人が,都会の人が,田舎の人が,独身者が,所帯持ちが,男の人が,女の人が,この作品を見て,何を思い,何を感じ,何を語るのか.そこへの興味が尽きない.

だから,本作は自分の中で「この十年で一番多くの人に薦めたいアニメ 」になっているのだと思う.

 

第2位:ハイスクール・フリート

今年いちばん好きになった作品ははいふりだった.ブルーレイも全部買った.

荒唐無稽な設定,ご都合主義の展開,そういったものの中にあって,
それなりにしっかりとした相互理解と成長の物語があった.そこが気に入っている.

人間は望むと望まざるとにかかわらず人間関係を通して変化していく.百合が関係性の産物なら,人間関係による人間の変化を描くこともまたその意志に沿うものであろう.

本作の主人公,岬明乃は「家族」というわからないものに憧れ,気負いから一人相撲に陥る.しかし,相手の立場になって初めてその重さに気づいて行動を改め,重さに気づくがゆえに失うことを恐れて足が止まるも,それでも最後は「家族」に支えられて危難を乗り越える.

たしかにその話の筋だけでも良い.良いのだけれど,最終話で真白が明乃に「行きたいって顔に書いてあるよ」と言うシーン.ここにそれ以上のものがある.

このシーンこそがまさにはいふり全12話の到達点であり物語の締めであり要石であって,ビルドゥングスロマンとしてのはいふりはここに完成を見たのだと思う.

まず,このシーンで「家族」の危機に動かずにおれないという明乃の初心,根源的な性質みたいなものが相互の信頼のもと受容されているのが嬉しい.有り体に見ても12話までで明乃は成長した.ただその成長は,過去の行動を否定するのでも無条件に肯定するのでもない.無鉄砲で独断専行という直すべきところを直しつつ,最初の方向性,意志を変えていない.つまり,キャラクターとして筋を通しつつも良い方向に行動が変化している.そこに健全なバランス感覚を見る.

そして,このシーンが真白の成長の結果でもあるところが秀逸だ.
真白は最初はマニュアル至上で他人を信用していないところがあったが,相手の立場や感情に配慮し,信頼のもとで任せることができる度量を手に入れている.優しげで砕けた口調も副官ではなく友人としての発言という印象で,これは友人として距離が近づいたともいえるし,公私の使い分けを身につけたともいえる.どちらにせよ好もしい変化であると思う.違いを認めてそれでも力になりたいと宣誓した11話も格好よかったが,どちらかというと落ち着いた最終話のこのシーンにより強く成長を感じた.

ミケシロキテる?というとそりゃもう間違いなくキテると答えるだろう.でも,キテなくてもいい.二人が築いた信頼関係にはそれだけで三億点くらいの価値がある.

主題歌流しながらバトルシップのオマージュをやったので一億五千万点,フルCGのLCSで一億点,福内さんで一億点,はいふりカメラで一億点くらいあるけど,それはそれ.減点法ではともかくも加点法では八億点くらいあるアニメだと思う.

 

第3位:Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀

アニメじゃねーじゃねーか!!!

最後のほうがボンクラかつドイヒーでよかった.
蔑さんと凛ちゃんさんが武の境地について語り合う以降の

 

初心者「C言語わからない」
中級者「C言語わかる」
上級者「C言語わからない」
導師「(理解に頓着しない)」

 

めいた格付けの押し出し方が好きだ.これにかぎらず,虚淵先生は人類普遍の構造を見てエピソードを書いてるんじゃないかなぁと思える瞬間があって,信者のしがいがある.

 

また,どうしても同じ分野で消費をしていると視野が狭くなってしまうので,布袋劇という違う文化に触れられたのは良かった……といえればいいけど,実質これってアニメみたいなもんじゃねーか!!!

 

2015年のアニメ個人的ベスト3

見る本数が更に減ったのもよくないんだけど,いくつもの価値観が交錯するような話を読めなくなっている,読めないならまだしも好まなくなってきているのは非常に由々しき問題だ.

第1位:ガールズ&パンツァー劇場版

ガルパン劇場版は体験なのでその良さは説明できない.

戦車一台ごとに車内での反響を考えて音響が制作されているとか,専門家の監修を入れてディテールアップしたとか,そういう熱意は確かにあるけれど「でもそれって自己満足じゃないの」と言われてしまうと,どこまでがただの自己満足でどこまでが本編の魅力を後押ししてるのかという基準を設けることはできないのだと思い知らされる.
王道,あるいは陳腐と評されるストーリーについても,それを要素として言語に分解し続ける限り,全く魅力の無いものとしてしか目に映らない.

しかし,映像は言葉よりも遥かに雄弁であり,ガルパン劇場版という体験は言葉の制約をすり抜けて輝きを放ち続ける.
そういう諦めの元,敗北宣言として絞り出された言葉が「ガルパンはいいぞ」なのである.

ガルパンはいいぞ.

第2位:機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

こんなにわかりやすくて良いのかガンダム!?

一部のリアルロボットに漂う,体制があって,反体制があって,イデオロギーがあって,その衝突は暴力として解決されていて,という図式が好きではなかった.
本作も世界設定的には地球と火星で不公平と確執があってその部分は確かにその図式なのだが,体制はあるけど統治が行き届いていないというのが先に来る.
そんな中で天下国家は良いから今そこにある家族を大事にしていきましょうや,というところにフォーカスしてるので,その視点については「そらそうなるやな」としか言いようが無いし,それを好もしくも思っている.
圧政と戦うのではなく無政府状態と戦うのだ,という現時点でのノリは,主人公たちがPMC所属というところも合わせて,ようやっと冷戦以降っぽい雰囲気になってきたという気がする.

本題としては,姫様の株が上昇を続ける中,団長の株価がストップ高で猛追といったところで,こいつはキテるぜ.

第3位:戦姫絶唱シンフォギアGX

中盤が段取り臭すぎるとか,オートスコアラーの使い方がもったいなさすぎるとか,ダメなところは大いにあったと思うけれど,RADIANT FORCEが流れた時の,「ああ,これは間違いなく今の自分のためにあるアニメだ」という確信を大事にしたい.

冒頭6分以外で好きなシーンはキャロル(大)がいきなり歌い出すシーン.