Aloestelic Site 3rd Edition

Twitterで書くと早口すぎて気持ち悪くなるとき用

バルダーズ・ゲート3:非D&Dプレイヤーのための戦闘ガイド

いよいよ12/21に『バルダーズ・ゲート3』(BG3)のPS5版および日本語PC版が日本で発売されます。


www.youtube.com

私は現在PC版でBG3を遊んでいますが、最高に楽しいゲームなのでぜひ遊んでほしいです。 しかし、BG3の戦闘の難易度は比較的高く、ルールは複雑でキャラビルドに多様性があります。なので、最初は立ち尽くしてしまうことがあるかもしれません。

BG3はTRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下D&D)の5版をベースにしており、ルールやデータは概ねD&Dに準拠しています。 D&D5版のルールを一定程度理解することで、BG3の戦闘は明確に楽になります。

本稿では、バックグラウンドであるD&Dのルールをもとに、BG3の戦闘を有利に進めるエッセンスを伝えることを目指します。

■総論

☝基本は5%刻み

D&Dではランダム値を出すときに20面のサイコロを使います。そして「20面サイコロの出目+修正値」が「目標値」を超えるかどうかでほぼあらゆることの成否が判定されます(以下、判定)。BG3においても同様で、攻撃やその回避、その他のことは5%刻みの確率で成否が決定します。

☝修正値+1は大きい

BG3で扱う数字は基本的に小さなものです。判定にかかわる修正値は1桁前半から多くて10後半、目標値も10〜30程度となります。したがって、修正値や目標値における+1の価値は想像以上に大きいと言えます。修正値が1大きければ5%成功しやすくなります。

■キャラビルド

ゲームを開始するとまずキャラクターを作成する工程が始まります。この部分で強いキャラクターを作ることができればゲームを有利に進めることができます。

☝キャラビルドは重要だが失敗に怯える必要はない

BG3においてキャラビルドは重要ですが、リビルドが比較的早期から可能になるため失敗に怯える必要はありません。

☝能力値は偶数が良い

キャラビルドの際に、まず「能力値」を割り振って決定します。能力値は様々な判定の際の修正値に影響します。能力値は【筋力】【敏捷力 】【耐久力】【知力】【判断力】【魅力】の6種類があり、それぞれ8〜17の範囲で決定します。能力値の合計には制限があり、特に高い能力値を得ようとすると制限が厳しくなります。

ここで重要なのは、判定に使われる修正値は「能力値」ではなく「能力値修正」で決定されるということです。

能力値修正は(能力値-10)/2 (小数点切り捨て)です。ビルド時の能力値修正は-1から+3の範囲に収まります。 端数は切り捨てのため、能力値は偶数が有利です。*1

☝キーになる能力値には高い値を振る

偶数だと効率が良いのですが、ではどの能力値を高くすべきでしょうか? どの能力値がどの判定に使われるかがわかると、指針になります。

戦闘がメインのゲームですので、戦闘に関してどの能力値を使うかを記載します。

能力値 戦闘時の用途(命中判定) 戦闘時の用途(命中以外)
筋力 近接攻撃の命中 近接攻撃のダメージ
敏捷力 遠隔攻撃の命中、一部の武器での近接攻撃の命中、回避(アーマークラス 遠隔攻撃のダメージ、一部の武器のダメージ、イニシアチブ
耐久力 HP
知力 呪文の命中
判断力 呪文の命中
魅力 呪文の命中

呪文の命中はクラスによって使う能力値が異なります。ウィザードは【知力】、クレリックドルイドは【判断力】、ソーサラー、バード、ウォーロックは【魅力】を命中に使用します。*2

基本的には、メインとなる攻撃手段で使う能力値に一番高い値を設定することになるでしょう。

なお、能力値の割り振りの際にはおすすめの値が初期値として設定されます。これを少しいじって偶数にそろえるとそんなに悪いようにはならないです。

☝クラス(職業)選択

(分量が多すぎるので気が向いたら後日記述します。どのクラスを選んでもそれなりに戦えるので大丈夫です)

☝技能

(戦闘に関係ないので後述します)

■戦闘の基本

戦闘において攻撃の命中や回避はシステマチックに決定されます。

☝イニシアチブ、ターン、アクション

戦闘において、その参加者はイニシアチブという値が高い順にターンが回ってきて行動します。戦闘可能な全員にターンが回ると、イニシアチブが最も高い参加者にターンが戻ります。*3

イニシアチブは戦闘開始時に【敏捷力】修正に1-4の乱数を足して決定されます。

自分のターンが来ると、移動、アクション、ボーナスアクションの3つの行動を任意の順番で組み合わせて実行できます。移動は移動力までの任意の距離を移動、攻撃や呪文の詠唱はアクション、その他些細な行動がボーナスアクションです。任意の順番で組み合わせられるので、少し移動してボーナスアクション、更に移動してアクション、更に移動、という行動も可能です。

☝攻撃の命中

アクションの代表的な例が攻撃です。大半の攻撃は以下で命中が決定されます。

【攻撃側の修正】+20面ダイスの出目 vs. 防御側のアーマークラス(AC)

前者が後者以上になれば攻撃は命中し、後者未満なら外れます。攻撃が当たるとダメージを軽減する手段は基本的にありません。オール・オア・ナッシングです。したがって、攻撃側は命中をとにかく高め、防御側はACをとにかく上げることが基本となります。

命中を上げるには?

命中は能力値の節で述べた通り、対応する能力値修正で決まります。メインの攻撃手段に最も高い能力値を割り振ると効果的です。

*4

ACを上げるには?

ACは主に着ている鎧と【敏捷力】の修正によって決定されます。 鎧には軽装、中装、重装の3カテゴリがあり、カテゴリによってACの計算式が異なります。

  • 軽装鎧:鎧のAC+【敏捷力】修正
  • 中装鎧:鎧のAC+【敏捷力】修正(最大+2)
  • 重装鎧:鎧のAC

基本的に重い鎧ほど鎧のACが高く、装備できるクラスが少なくなっています。 軽い鎧は鎧のACこそ低いですが【敏捷力】を足すことができるため、【敏捷力】が高いキャラクターでは軽い鎧のほうが結果的にACが高くなることがあります。

AC計算の特殊な例として以下があります。

  • モンク:鎧も盾も装備していない場合、ACが10+【敏捷力】修正+【判断力】修正 になる
  • バーバリアン:鎧を装備していない場合、ACが10+【敏捷力】修正+【耐久力】修正 になる
  • 盾:盾を装備するとACが+2される

盾は極めて強力です。ACを高めたい前衛はぜひ盾を持ちましょう。

☝攻撃のダメージ

命中した場合には攻撃のダメージが計算されます。 ダメージを軽減する手段は基本的になく、計算されたダメージが相手のHPから引かれ、HPが0以下になると気絶します。 したがって、与えるダメージを増やし、自身のHPをできるだけ多く保つことが、戦闘を有利に運ぶことに繋がります。

攻撃のダメージを増やすには

武器のダメージは攻撃に使った能力値修正に乱数値を足します。

乱数値は武器の種類によって決まっており、強い武器や両手武器はこの乱数値の幅が広く、大きな値が出る可能性があります。ダガーで1〜4、ロングソードで1〜8、グレートソードで2〜12といった具合です。基本的に強い武器ほど装備できるクラスが少なくなっています。

魔法のダメージにおいて乱数値は魔法の種類によってあらかじめ決まっています。また、魔法の場合は基本的に能力値修正は足されません。その代わり何かしらの追加効果があることが多いです。

HPを増やすには

HPは概ね(【耐久力】修正+クラスによるHP補正)×レベルに近い値になります。前衛向きのクラスほどクラスによる修正が大きくなっています。あまりコントロール可能な部分はないのですが、前衛(近接攻撃主体のクラス)なら能力値で【耐久力】は高め(可能なら14以上)にしておくと良いでしょう。

☝特殊な攻撃(セーヴィング・スロー)

一部の呪文や、状態異常の追加効果は異なる判定方法で効果が決まります。攻撃側でなく防御側がダイスを振って効果を決定します。これをセーヴィング・スロー(セーブ)と呼びます。

【防御側のセーブ修正値】+20面サイコロの出目 vs. 【攻撃側のセーブ難易度】

で、前者が後者以上になればセーブ成功となり、効果は限定的になります。

防御側のセーヴ修正値は対応する能力値修正とボーナスで決定されます。対応する能力値は爆発を避けるときは【敏捷力】、誘惑に耐えるときは【判断力】といった具合に、効果によって異なります。セーブ修正やセーブ難易度に関してはACや命中ほど狙って上げられるものでもないので省略します。

■戦闘時の立ち回り

BG3における戦闘はタクティカルなものとなっており、ビルド3、立ち回り7くらいの割合で戦闘に影響するため、賢い立ち回りを要求されます。

☝攻撃は集中せよ

数の優劣が全体の形勢にダイレクトに影響します。敵へのダメージは可能な限り集中させ、敵の数を減らしていくことが基本戦術になります。

☝前衛は戦線を意識して敵に張り付け

近接攻撃が可能な相手から移動して離れようとすると、赤いマーカーが表示され、近接攻撃を受けます(機会攻撃)。これは逆もまた然りで、近接攻撃可能な味方が張り付いた場合、敵が移動しようとした場合はリアクションで一回攻撃できます。自分のターンのアクションとは別に攻撃ができる機会攻撃の効果は大きく、相手が機会攻撃を嫌って移動しなければ相手をその場にとどまらせることができます。

このため、敵に前衛を張り付けて動きを止めつつそこに後衛が遠隔攻撃を加えるのが有効な戦術になります。しかし、近接型の敵が後衛に張り付くと悲惨なことになるため、前衛は通路の狭いところに立つなどして敵を後ろに通さない位置取りも重要になってきます。

☝後衛は射線を意識して動き回れ

遠隔攻撃できるということは遠隔攻撃されるということです。遠隔攻撃主体のクラスはACもHPも低くなりがちなため、攻撃を受けない立ち回りが重要になります。

BG3では移動とアクションは自由に組み合わせることができ、移動力がある限り、移動→攻撃→移動というシーケンスが可能です。また、攻撃者とその相手の間に壁などの障害物があると、相互に遠隔攻撃ができなくなります。したがって、普段は壁の陰など敵から遠隔攻撃されない位置に隠れつつ、自分のターンが来たら攻撃できる位置まで移動して射撃、残った移動力でふたたび攻撃を受けない位置まで退避、という振る舞いが理想的です。

また、遠隔攻撃には位置取りによって有利/不利が絡むことが多いです。そのため「あと一発当てれば敵を倒せる」というようなケースでは、防御よりも攻撃を優先して有利を取れる位置に移動することも重要です。

☝有利と不利を活用する

BG3では攻撃に有利が得られる状況では命中判定を2回行ってどちらかが成功すれば成功、不利となる状況では命中判定を2回行ってどちらかが失敗すれば失敗となります。これは修正値に換算すると最大+5/-5という極めて強力な補正に相当します。 したがって、戦闘においては可能な限り不利を回避し、有利を狙うことが有効です。これは逆も同様なので、敵に可能な限り不利を押し付け、有利を取らせないことも同程度に重要になってきます。有利/不利は攻撃の命中率を確認する際にその理由が緑と赤のアイコンで表示されるので、それを参考にすると良いでしょう。

典型的な不利
  • 脅威
    • 敵に隣接されると遠隔攻撃全てに不利が付きます。遠隔攻撃を行うキャラは敵から離れた状態を維持する立ち回りを要求されます
    • つまり敵の遠距離アタッカーに味方を隣接させるとその敵の命中が著しく下がります
  • 通常範囲外の射程
    • 遠隔攻撃の相手が遠すぎると不利がつくことがあります
  • 高い位置
    • 自身よりも高い位置にいる相手に遠隔攻撃を行う場合-2の補正が付きます
      • これは2回判定ではなく-2の補正となります。命中-10%は大きいので避けられるなら避けたい
  • 状態異常
    • 毒などの状態異常を受けていると、攻撃の際に不利がつきます
典型的な有利
  • 状態異常
    • 転倒や盲目などの状態異常を持った相手を攻撃する際には有利が得られます
    • 特殊攻撃でこれらの状態異常を付与できる際には狙っていきたい
  • 低い位置
    • 自身よりも低い位置にいる相手に遠隔攻撃を行う場合+2の補正が付きます
      • これは例外的に2回判定ではなく+2の補正となります。命中+10%は大きいので狙っていきたい

有利/不利は非常に強力ですが、1ターン使って得るほどの価値はありません。攻撃できる時は無理に移動せず、諦めて攻撃しましょう。

☝ボーナスアクションを活用する

戦闘ターンでは移動、アクション、ボーナスアクション、の3つの行動を任意に組み合わせて取ることができます。攻撃や呪文の詠唱はアクションですが、アクションでできる行動はそこまで差が付きません。反面、ボーナスアクションでできることは多様かつ他のことと並行してできるのでこの部分の使いこなしで差が付きます。

以下は、クラスを問わず全員が利用可能なボーナスアクションです。丸儲けなので機を見てやっていきたい。

突き飛ばし:

運動【筋力】 の技能判定を行い、成功した場合相手を突き飛ばします。これにより高所から突き落とすと洒落にならないダメージが出るため、筋力の高い前衛にとって有効な選択肢になります。

跳躍:

移動中にジャンプします。障害物を飛び越えたり、仲間がいるスペースを飛び越えたりできます。位置取りが重要なゲームですので、積極的にジャンプ可能か試してみるのが有用です。

二刀流:

両手に異なる武器を装備していると、ボーナスアクションでもう一回攻撃できます。強力ですがダメージはそれほどでもなく、盾や両手武器とのトレードオフになります。ただし、ローグはターン1回限定で大量の追加ダメージを与える能力を持つため、通常攻撃を外した保険として二刀流を残しておくのは極めて有効です。

アイテムの使用:

回復のポーションなど一部の消費アイテムはボーナスアクションで使用できます。

浸す:

一部の武器はボーナスアクションで毒を塗ったり火をつけたりすることができます。これによりダメージが数点上昇するため、他のダメージソースがない序盤においては強力です。

☝気絶はケアせよ

BG3においてキャラクターのHPが0になると気絶して行動不能になります。一般的な回復手段、もしくは「ヘルプ」アクションでHPを回復することができ、HPが1以上になると再び行動可能になります*5。気絶の回復に特別なアイテムや呪文は必要ありません。

したがって、気絶は気軽に発生し、気軽に回復できます。回復直後に攻撃されて再気絶というのも頻発しますが、相手にターンを使わせた時点で仕事をしているので、この「起き上がりこぼし」も有効な戦術となります。

また、気絶を3ターン以上放置したり気絶中にダメージを受けると死亡することがあります。死亡すると今度こそ蘇生に高度な呪文*6が必要となるため、死なないうちに起こしてあげましょう。

■クラスについて

(後日気が向いたら書きます)

■パーティ構成について

☝パーティとして要件を満たせ

BG3は最大4人のパーティで冒険をします。コンパニオン(いわゆる仲間)には様々なクラスの人がいるので、選んで連れていくことができます。パーティとして必要になる能力は多いですが、必ずしも一人で満たす必要はなくパーティの中の誰かが満たせばよい場合がほとんどです。ビルドによっては一人が複数役を兼ねることも可能です。

以下はパーティにおける代表的な役割です。

ダメージ担当(Attacker)

攻撃で大きなダメージを出す担当が一人いると戦闘が有利に運びます。特に序盤ではローグやモンクが多くのダメージを出せるでしょう。

壁担当(Tank)

高いアーマークラスやHPで敵の攻撃を受け止め、戦線を構築する担当が一人いると有効です。重装鎧を着られるファイターやパラディン、激怒時に受けるダメージを半減できるバーバリアンが適任でしょう。

回復担当(Healer)

回復可能なクラスが一人いると有効です。特に「癒しの言葉/Healing Word」が使えるクレリック、バード、ドルイドあたりが適任です。

「癒やしの言葉」が強力なのはボーナスアクションで離れた場所にいる味方を回復可能なためです。余りがちなボーナスアクションで味方を気絶から回復させることができるので、戦闘時の粘り強さがかなり上がります。

*7

罠と鍵担当

罠や鍵を解除可能なクラスが一人いると冒険の幅が広がります。鍵や鍵の解除は「手先の早業」技能に習熟していれば可能ですが、これが可能なクラスはローグやバードに限られます。

☝技能はよく使うものをバランスよく

技能はパーティ全体でバラけていると対応力が上がります。また、技能の使用頻度にはかなり差があります。頻出の技能をパーティ全体でカバーしつつ、余力でそれ以外の技能を適当にバラけて取っておくとよいでしょう。

冒険系:捜査【知力】、手先の早業【敏捷力】、生存【判断力】

捜査は隠された扉や罠の発見、手先の早業は罠や鍵の解除、生存は埋まっているアイテムの発見に使います。パーティの誰かが持っていると良いでしょう。

対人系:説得【魅力】、威嚇【魅力】、ペテン【魅力】、看破【判断力】

会話中に要求されることが多く、判定を成功させることで戦闘を回避したり取引を有利に進めたりできます。NPCに話しかけることが多いクラスがまとめて持つと良いでしょう。

■戦闘外の行動

戦闘外の行動で戦闘に影響しそうなことについて述べます。

☝回復は休憩が基本

HPを含むリソースの回復は休憩で行います。休憩には小休憩と大休憩があります。

  • 小休憩:HPが最大値の半分回復します。一部の能力の使用回数が回復します。1日に2回まで可能です。
  • 大休憩:HPが全回復します。すべての能力の使用回数が回復します。大休憩にはキャンプ用品を消費し、大休憩をすると翌日になります。また、イベントが発生することがあります。

HPを回復する能力(呪文など)は基本的に大休憩を行わないと回復しません。したがって、休憩をせずにHPの回復に呪文を多用しているとあっという間にリソースが尽きてしまいます。回復呪文は戦闘中の回復をメインの役割とし、小休憩を適度に取るのがよいでしょう。

*1:ただし、将来的に能力値が上がることがあるため、それを見越して奇数に留めるテクニックがあります

*2:それ以外のクラスも魔法を使えますがメインの攻撃手段にはならないので省略します

*3:イニシアチブは振り直されません

*4:実際は判定時に習熟ボーナスやアイテムのボーナスが足されますが、前者はレベルで決定するためプレイヤーが介入する余地はありません。アイテムに関しては魔法の武器(命中に+がつく)を拾ったら考えると良いでしょう

*5:ただし、再び行動可能になったターンはアクションが取れません

*6:「緊急復活/Revivify」。初期装備で巻物が手に入るので序盤でも救済策はあります

*7:いわゆる「魔法使い」であるところの、ウィザード、ウォーロックソーサラーの出番がないように見えますが、彼らは中盤以降に真価を発揮します。序盤でも慣れた人が使うときちんと強いのですが……

艦これの同人誌を作るまでに読んだ12冊+α(2019年版)

 昨年冬に書いた艦これの小説同人誌『酷寒』が売り切れました*1

www.melonbooks.co.jp

 ソルジェニーツィンの収容所小説ふうの世界観で艦これの二次創作をやるという変な同人誌だったのですが、こんな奇態な本が100部以上も頒布されてしまったというのは心強いものがあります。本編は完全に架空の出来事ばかりですが、書くにあたって参考にした本を記録しておきます。

グラーグ関連

舞台が強制労働収容所(グラーグ)なので、それについての本を読みました。

イワン・デニーソヴィチの一日

 ノーベル賞作家ソルジェニーツィンのデビュー作。自分の中でガンちゃんグラーグに入ってた説はここから始まった。衝撃的で「こんな世界があったのか」とその圧倒的な空気に当てられました。悲惨な収容所の話ではあるのですが、こいつは日常系です。他のやつを読むとわかる。これは日常系。

収容所群島

収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察

収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察

 ソ連強制収容所を取り巻くあらゆる事象について記録を試みた作品。ソルジェニーツィンはこの本をロシアで結局出すことができませんでした。

 プレミア価格がついたクソ分厚い本6冊分延々と、だいたい全部にわたって人類の愚行が述べられています。そういう書物です。しかし、じゃあ長いだけかというととんでもない!そのどこにも漫然としたものはなく、一行一行から怒りが伝わってきます。  読んでいてあまりの理不尽さにクラクラきます。なんなんだこれはと、本当に、なんでどうしてこうなったんだ、と言いたくなる。そして、その恐るべき結果をもたらしたものの端々に人類普遍、半径5メートルにある凡庸な愚かしさがにじむのです。すごく興味深い。「おそロシア」などと言っている場合ではない。野放図に資本主義を奉じれば共産主義のもたらした惨禍から距離を置けるというのは単純にすぎるでしょう(資本主義社会の申し子たる営業が「ノルマ」を口にし、強制労働収容所の環境は「独立採算」によって悪化するのです)

 これを読まなかったらモチベーションが保たずに書けなかった。しかし、これがどういうモチベーションになったかは……よくわかりません

極北 コルィマ物語

 なんでグラーグの本みんなプレミアついてしまうん?グラーグから生還した詩人の本です。

 新刊があれば是非買いたかったんですけど、プレミア付きの中古じゃ作者のためにならんよな……ということで図書館で借りました。食事をとってようやく自ら死を選ぶことができた囚人のエピソードが、ああ、そういうところあるよな、と思ってしまって辛い。

グラーグ ソ連集中収容所の研究

グラーグ―ソ連集中収容所の歴史

グラーグ―ソ連集中収容所の歴史

 英国在住の研究者によるピュリツァー賞受賞作のグラーグ研究書ですが一般向けで読みやすいです。

 確かにソルジェニーツィンやシャラーモフの作品は偉大なのですが、同時代的であるし、原液みたいなものだし、古いです。この本とてけして新しくはないのですが、ブレジネフの時代に書かれたものよりは新しいですし、内容は網羅的です。今回読んだ本の中で内容を頼りにするという点ではこれが一番いいと思います。

 もしもこの本に触れる機会があれば、ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』がどのような熱意を持って出版され、かつての囚人たちにどのように受容されたかというくだり、ここはぜひぜひ読んでほしい。今まで「自分たちの物語」を持たなかった人々がそれを得ることの力強さ。最近とみに過小評価されがちな「文章の力」、そのすごさが垣間見えます。

ラーゲリ註解事典

ラーゲリ(強制収容所)註解事典

ラーゲリ(強制収容所)註解事典

 もしあなたがグラーグを舞台とした小説を書きたいと思ったら、この本はマストバイです。

 スパイ容疑で長く抑留されたフランス人の作者による本です。事典の名の通り、グラーグに関するよろずの事について見出し語があり、それについての記載が並んでいます。作中の描写はこの本にかなり多くを拠っています。もう一度収容所小説のエミュレーションをやることになったら、その時もずっと脇に置きたい。項目ごとに引けて非常に取り回しが良いです。

 訳にあたっている方にはシベリア抑留で苦労された方もいらっしゃいました。この本の編集中(20年以上前です)にすでに鬼籍に入られたということがあとがきで述べられていて、遠い目になりました。

共食いの島

共食いの島

共食いの島

 これは収容所というよりは強制移民の話なのですが、結局のところ飢餓と加重労働とどうしようもない不作為が多くの人間を死に至らしめたという点で同根の話です。

 「(上役への忖度のあまり、不正なしには)達成不可能な計画をコミットする」ことを指す「成功による幻惑」という概念をこの本で知りました。いやー、その言葉を言いだしたのスターリンなんですよ(たしか)。当時スターリンはそれをそのように呼んだのか!という新鮮な驚きがありますし、圧をかけておきながら「成果に幻惑されたお前が悪いんだけど?」的な他人事感がたまらないですね!東芝おとなチャレンジを思い出さずにはいられないのですが、権力の集中や恐怖による統治が行き着く先はどこも似たような構造を見せるんでしょうか?

平和祈念資料館

www.heiwakinen.go.jp

 シベリア抑留・海外引揚者に関連する資料の展示をしている資料館です。新宿のオフィス街にあり、国の委託事業なので無料で入れます。こういったメモリアルが公に運営されているというのは、大切なことです。展示は著作権があるニュース写真などを除いて撮影可能です。

 扱うテーマがテーマだしシベリア抑留にかする部分もあるので仁義を切る意味でも行かなきゃな……と、義務感から執筆も半ばを過ぎた頃に行ったのですが、もっと早くに行っておけば良かった。当然、グラーグの資料館ではないのでシベリア抑留や海外引き揚げの資料しかありませんが……その分、響や占守のエピソードはもっと豊かなものになったかもしれません。

 展示物でオススメなのはスプーン。スプーンといえばグラーグで囚人が自作する物品として鉄板なんですが、これが凄まじく出来が良い。おそらく大切なものなので綺麗にされて展示されているというのもあるでしょうが……職人芸と、それを後押しした執念を感じます。笑うしかないくらいピッカピカに磨き上げられているので撮った写真をSNSにアップする際は映り込みに注意が必要です。

 また、展示物以外に、図書コーナーが充実しているのが素晴らしいです。上の城など飾り物に過ぎん。ラピュタの叡智はここに結集されているのだ。出版された抑留者の手記や名簿、戦史叢書などがあります。レファレンスもやってるようでした。

 ハイシーズン(8月)だったのもあって雪風に乗っておられたという方が講演スペースで講演されていたのと、ご尊父のたどった道筋を図書コーナーで調べられている方がいらっしゃったのが印象的でした。同人誌を会場で頒布したときも「祖父がシベリアにいた」という方が買われたケースもありましたし、歴史は連綿と続いてるもんです。それがあたりまえなんですけどね。忘れちゃうから。

ソ連一般関連

 ソ連がなくなって四半世紀が過ぎました。冷戦も遠く、なかなか新しい本はでませんが、それはそうとしてイメージは必要になります。

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

 ソ連の漫画といえばやはりこの人!速水螺旋人先生!  絵と書き込みを隅々まで眺めるのがとても楽しい一冊です。冒頭のシベリアにまつわる昔話はこの本で紹介されていたエピソードに拠っています。

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

図説・第二次世界大戦

 出来事を位置と時間にマップするのが苦手なので、社会科全般が昔から苦手でした。太平洋戦争もよくわかっていないが、欧州もさっぱりわからん。個別のエピソードは知っているものもあるが、点の知識でしかない。10年以上前にストライクウィッチーズにハマったときにちょっと調べた気がするけど忘れた。  ……そんなひどい状況だったため、総説めいた本を読みましょうということで買いました。これら二冊のおかげで、個々のエピソードが「これはこういう意味だったのか」と立ち上がってくる。Googleで調べれば情報が出てくることであっても、それを位置づけるための知識の有無が理解度に大きな違いを及ぼすように思えます。

社会主義の軍隊

 このあたりは、政治委員の立ち位置、NKVDの立ち位置を調べるために読みました。冷戦期の本であるため、出版当時かその少し前くらいの話に紙幅が割かれており、直接使える部分はあまりなかった。組織図はちょっと使ったかな?くらいで、結局英語版Wikipediaを継ぎ接ぎしたやつで済ませてしまいました。図書館技能の低さが露呈した感じです。レファレンスサービスを使えばよかった。

オクトーバー:物語ロシア革命

 著名SF作家によるノンフィクション。革命以前~10月革命に至るまでの群像劇です。

 最初は2月革命前夜のエピソードを入れようと思ってたんですよね。ガングートの出自や彼女がなぜ信仰の人になったかというのを描きたかった。ただ、そのエピソードを入れると逆に嘘くさくなりそうだったのでバッサリ削りました。だからガンちゃんは最初から最後まで、敬虔な、信仰の人です。

T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

 これを映画館で見たあとに表紙絵の打ち合わせに行きました。最高にテンションがあがり、「俺はソ連をやるんだ」という気持ちになりました。ソ連をやるってなんだ?

感情関連

 女と女の感情よりも広い定義が必要になります。

月と怪物(『アステリズムに花束を』所収)

 だいたいこいつのせいです。「謎のソ連百合」として知られた、ソ連百合はどこまでも飛んで行けるのだということを世に知らしめたエポックメイキングな作品。いや、確かにガングートをグラーグに入れるまでのアイディアはずっとあったんですけど、そのアイディアを発火せしめたのは、ソ連百合のポテンシャルを力強く示してくれたこの作品です。

スターリングラード

スターリングラード [Blu-ray]

スターリングラード [Blu-ray]

  • 発売日: 2013/06/04
  • メディア: Blu-ray

 評判がよいわけではない方の『スターリングラード』です。これ自体は普通に面白い(悪役が大変いい味出していて良いです)。でも、映像があると格段にイメージが湧きますし、なによりダニロフ→ザイツェフの感情、これですね。ソーニャの感情はこれと『県警対組織暴力』に引きずられてるところがあります。本当に?

駈込み訴え

www.aozora.gr.jp

 もはやソ連関係ない、みんな大好き太宰治ヤンデレ小説。  最初ソーニャは『ブラックラグーン』のロベルタのごとく自分が殺した死者が見えるようになって気が狂っていく設定だったんですが、そんなタマじゃなくないかというのと、これを読んで「自分の感情を自分で片付けられなくてむちゃくちゃになっちゃて、でもそれを半端に自覚して言語化できている状況って、エロいよな……」と思ったので方針変更しました。

 

 2018年も調べ物をしながら同人誌を書いたのですが、それと比べると今回は古い資料に当たらないといけないことも多く、図書館の威力を痛感しました。ありがとう大田区。もう二度とふるさと納税をしたりしないよ。

*1:売り切れた通販ページにリンクを貼る意味はあるのか?どうしても欲しい人はTwitter(@maruiboushi)までご相談ください

ボードゲーム合宿でやったゲーム2019

 先週末に今年もボードゲーム合宿に行ってまいりましたので,そこで遊んだゲームを紹介します.例によって写真ははいふりカメラでお送りいたします.

 今年はチーム戦ゲームとバランスゲームを比較的多くやった気がします.

メン・アット・ワーク

 めくられたカードの指示に従って建材や労働者を積み重ねて配置していくバランスゲーム.物を落とすと事故として安全証明が取り消され,3回で指名停止(ゲーム除外)になる.カードによりなされる建築指示は基本的に鬼畜であり,すごい勢いで事故が起きる.構造物の高さを更新すると勝利点をくれる頭の悪い(褒め言葉)現場監督の存在も鬼畜現場を加速する.

f:id:maruiboushi:20191102155235j:plain
バランスを保つ構造物

 写真のとおり,ヘルメットをかぶったミープル*1,組み立て式のクレーンなどコンポーネントも豪華で全体的に満足度が高い.

 バランスゲームの常として,手番終了時に一定時間待って構造物が安定した状態にあることを確認するという営みが必要になるが,このときにみんなで構造物を指差して「ヨシ!」と言っていた.ロールプレイはバッチリ,卓の合意も取れるしバランスゲームにおける指差し確認は有用ではないかと思う.

 まぁ,ヨシ!したあとに人間が足場から落ちることとか結構あったけど,「あれは現場に入る前の事故でうちの責任じゃない」みたいな処理がなされていたので,やっぱりロールプレイはバッチリだった.

キャプテン・リノ

 カードと厚紙で塔を建てるバランスゲーム.ゲーム所有者からルールとカードの説明を受けて,

「ほーん,なるほど簡単で子供でも楽しめそうなゲームっすね」

と言っていたら,所有者が

「いや……このゲームはやめよう.ルールも単純だしこんなの子供でもできるゲームだ.俺たちは大人だから……大人のゲームをやる!!」

と声高らかに宣言し,絵柄がまったく同じのクソでかい箱を出してきた.この時点であまりのでかさにフロアは興奮の渦に飲み込まれた.

 バカでかい箱を開けるとA5サイズのカードと15cmはあろうかといううすらでかいミープルが出てきて「うわぁー!でけェー!」と大興奮する3x歳児たち.そんなサイズのものをどんどん積んでいくと簡単に身長を超えてしまって著しく積みにくくなるため「身長が低いと不利……なるほどこれは……大人*2のゲームだぜ!」となった.頑張れば3mくらいまで積めるらしい.

 でかいものはクールだ,と思った.

キャプテン・ソナー

(これこそはいふりカメラで写真を撮るべきゲームだったのに撮り忘れたので写真無しでお送りします)

 チーム対戦型潜水艦ゲーム.屏風のような長大な衝立を挟んで両チームが相対し,ターンベースで交互に行動を宣言していく.相手チームの行動宣言から位置を推測し,先に相手を撃沈したほうの勝ち.なお,上級者向けにターンによらず行動宣言ができるリアルタイム制もあり.

 プレイヤーは艦長,通信士,航海士,機関長の4つの役割のうちひとつ以上*3を担当する.役割は以下.

  • 艦長:最終的な行動の決定と行動宣言をする
  • 通信士:相手チームの行動宣言から相手の位置を推測し,艦長に情報を上げる
  • 航海士:潜水艦の装備(ソナー,魚雷,等)の準備をする,艦長の補佐をする
  • 機関長:行動のたびに艦のあちこちが壊れるので,壊れても装備が動くようにダメコンをする

 このゲームのすごく良いところとして,ロールプレイがデザインにしっかり組み込まれていることがある.このゲームでは艦の破損状態が行動宣言をするうえで非常に重要(破損状態は行動を制約し,行動は破損状態を変化させる)なのだが,機関長(今後の行動を阻害しないように破損状態に介入する)と艦長(破損状態も見て今後の行動を決める)の間に航海士が挟まれるような席順となっており,極めて重要な機関長ー艦長の間のコミュニケーションが阻害されるようなつくりなっている.わざとそうしているらしいのだがこれは大変すごい.兵科将校と機関将校の二系問題とかを連想して胸熱である.

 もちろん「艦長!座標を」「座標2-B!」「復唱!座標2-B,魚雷装填,注水開始」とか「注水音!(悲鳴に近い報告)」とかそういう全人類がキッザニア*4でやりたいロールプレイもできるので安心だ.

 自分がやったときは通信士をやったのだが,相手の行動宣言を聞き逃さないようにしつつ,過去の行動宣言の記録やソナー情報の記録と照らし合わせて敵の位置を絞り込みつつ,艦長とコミュニケーションをとらないといけない.シングルコア性能もマルチコア性能も要求されて頭がパンクしそうだった.ターン制でこれなのでリアルタイム制で通信士に求められる処理能力たるやいかほどのものか.

 しかも判断ミスできないというプレッシャーがあるわけで,自分の耐性もさることながら,チームメイトにプレッシャーを掛けないという心理的安全に配慮した行動も求められる.というか,友達と楽しくゲームをやるんだからそれは義務でよいと思う*5

 とまぁ,アツくて面白いゲームなんだけど認知能力と人間性を兼ね備えたゲーマーを8人 or 6人とデカい机を揃えないと遊べない……というハードルの高さこそが最大の欠点ではなかろうか.ただ,そのハードルに見合った体験はある.まさにオンリーワン.超おすすめ.

デクリプト

 2チームに分かれて相手チームの暗号を解読する特殊な連想ゲーム.

 チーム内の一人が暗号役,残りが解読役となって,暗号役は自分だけが知っている平文(1ー4までの数字3文字)を暗号化して公開する.敵味方とも解読役はそれを復号することを目指す.暗号化アルゴリズムは「平文の文字をキーワードから連想した表現に置き換える」であり,暗号鍵(1-4までの文字と1:1対応するキーワード)は味方内で共有されている.この条件下で暗号役は敵チームの解読役を惑わし,かつ味方の解読役が一意に復号できるような暗号化を考えることになる.攻守を交代して繰り返しつつ,相手チームの暗号役が伝達しようとしている平文を2回当てれば勝ち,味方チームの解読役が復号に2回失敗すると負け.

 この暗号化が実に難しい.暗号鍵は固定&暗号文と平文のペアは解読役の予想発表後に公表される&過去に使った置き換えは禁止,というルールなので,安易な連想ばかりしているとまたたく間に鍵がバレてしまう.鍵についての情報を増やさない(=似た方向性の)連想を続けていると鍵でなく直接平文を当てられる,ひねった連想は短期的には強いが長期的にはピンポイントで鍵を特定される……とどう暗号化しても辛い.鍵を知っていないと(=つまり味方でないと)特定できないようなふわっとした表現が良いわけだが,暗号化に30秒の時間制限があるため,そんなうまい手をそうそう思いつけるものではない.持ち回りとはいえ暗号役はプレッシャーがやばいので,相手ターンや解読中に次の表現を考えておかないと辛いかもしれない.

 非常にユニークで面白いゲームだと思う.

シュタウファー

 6つの都市に自派の人間を送り込み,議席を獲得して勝利点を稼ぐワーカープレイスメント.

 コストの払い方やターン順の決め方がちょっと特殊で,ワーカープレイスメントといえば拡大再生産!みたいなこともそんなになく,淡々としている.王様(ホーエンシュタウフェン朝のハインリヒ6世)が巡察した領国では議席獲得に払ったコストが戻ってくるのでそのあたりを計算しながら手駒をぐるぐる回していく.

 ターン毎に王様がどこに行くか,どこの領国で精算(議席を勝利点に変換すること)が行われるかという重要情報がゲーム開始時にすべて決まって公開されるので,「Nターン後はどうなるか,それを見込んで今は走るかそれともしゃがむか」みたいな判断がしみじみと楽しい.そこにワーカープレイスメントならではのままならなさが積み重なるわけで,絶妙なやっていき感がある.良い.

 となって衝動買いしたやつだけど,結果から言えば買って正解.面白かった.ただ,それなりにゲーム慣れした人相手でしか遊べないゲームなので,二度目を遊ぶ機会はあるんだろうかという感じ.

 5人でやって圧勝といえる勝利を達成.途中の議席獲得では領国精算時の勝利点を目的とせず,最終精算で使う勝利点と議席ボーナスを狙いに行ったのが奏効した.巡察を計算に入れて効率よく手下を使い回せたのも良かった.勝てるゲームは良いゲーム(一年ぶり三度目).

ザバンドールの鉱山

 典型的な拡大再生産ゲームに競りの要素が入ったもの.宝石を採掘し,宝石で採掘手段や勝利点を獲得し,宝石でそれらを強化する. 3人でやって2位.やや淡白だけど面白い.『ザバンドールの笏』もそうだがこのシリーズは悪くないしそつなく面白いんだけどどこか淡白で影が薄いところがある.

 熟練すればもうすこしまともに戦えそうな気がした.

ダンジョンズアンドダンゲロス

 我々はなぜ合宿でダンゲロスのゲームをやろうとするのか?*6持ってくるやつがいるからさ……

 プレイヤーがキャラクターを保有し,協力しながらダンジョンを潜っていくゲーム.『ディセント』っぽい感じというかGM不要のTRPGっぽい感じというか. スマートフォンQRコードを読み込むとWebアプリが起動し,ノベルゲーっぽい感じでシナリオが提示される.イベントの処理(どういうモンスターが出てくるか)もそのWebアプリが教えてくれる.ガジェットとの連携は流行りの感じだけれど,なかなか力が入っており,ちょっと感動した.

 ルールはダンゲロスらしい大味さというか,サイコロの出目と固有能力でなんとかなる!というやつで,だいたい酷い(褒め言葉).「このルールの説明がない!」「巻末のサマリにだけ書いてあったわ……」みたいな事が多く,その上でバランス(特に時間制限)が普通にシビアなので普通にタイムオーバーで負けた.D&Dや世界樹の迷宮なら絶対にやらないようなクソ迂闊ムーブで悶死したので悔しかったが,シビアでないダンジョンなんて玉葱の入ってない牛丼みたいなもんなので満足いく負けではある.楽しかったしいずれ再挑戦したい.

Wealth of Nations

 私自身はただのプロレタリアートだが,一年に一度くらいは資本家の気分が味わいたいのでやった.

 どういうゲームかは 去年の記事参照. maruiboushi.hatenablog.com

 以下はプレイログ.

 4人プレイ.なんかスタートタイルで資本と電力の生産タイルが残ってたので取った.毎回ワンパターンな戦略(資本と電力から銀行を目指す)だと思うけど,遅めの順目で残ってたわけで,取らない勝ち筋が見えないし取るしかなかった.スタートプレイヤーが食料ー食料の生産タイルを取ったり,労働力を取ったプレイヤーが生産できるのに生産しなかったりと,場は大荒れに荒れた.ボジョレー・ヌーヴォーのごとく「つらい」「今までのプレイで一番つらい」「最高につらかったと言われる3年前のWoNに匹敵するつらさ」と,だいたいやるたびにつらいが今回もやっぱりつらい.

 労働力が生産停止で暴騰したため食料プレイヤーが労働力に噛みに行って,生産した労働力を使って旗を置ききってゲーム終了.資本独占&電力もそこそこ高かったため堅調に推移,生産タイル数も現金もそこそこ稼げてはいたもののやはり生産タイル数で追いつけず4点差で2位.もう1R回ってたら……と思うけれど,そもそも終了の権利を握られた時点で勝ち目はなかったわけで.善戦したにはしたが,これだけ有利な条件で馴染んだ戦略を使ってさえ2位に甘んじたというのはやっぱり悔しい.勝てるゲームは良いゲーム,悔しいゲームも良いゲームだ.

 今回の教訓としては以下.何を今更な話ばかりだけど,改めて実感.

  • Win-Winで回っていくゲームなので,意図的な生産停止(Lose-Lose)はかなり不利になる
  • 価格の吊り上げは吊り上げすぎると新規参入を招くので危険
  • 労働力(赤)は序盤高騰,中盤暴落,終盤でちょっと戻すという値動きをしがちで交換価値が微妙な資源という印象なのだけど,自家消費してゲームの終了権を握る(あるいはそれをプレッシャーとして利用してゲームを有利に展開する)という勝ち筋がある
    • 過去にそんなような議論をした記憶はあるが,赤をからめた速攻がここまで綺麗に決まったのは初めて見た
  • 4人で遊ぶのとても楽しい.5人以上は狭すぎる.3人だと交渉が微妙.

Trans America

 北米大陸に線路を引くゲーム.アメリカ全土に散らばる目的地(プレイヤーによって異なり,秘匿されている)を目指して線路を引いていき,最初にすべての目的地にたどり着くことを目指す.相互乗り入れによって他プレイヤーの引いた線路を使うのが勝利の鍵.共有リソースを利用して秘匿された目的地を巡回するという点で『エクスペディション』に近い手触りがある.

 デカいゲームボードと鉄道*7というテーマに「すわ,重量級か!?」と戦慄が走るも,インストもプレイも軽く,人数のバリエーションも効く優秀なゲーム.今年の「単純なルールながらも大当たり」アワードはこれ.

なお,アメリカ中の都市の名前が出てくるのでちょっぴりアメリカの地理に詳しくなれる.シアトルってあんな端っこだったんだなぁ……

光輝く高輪アンリミテッドエターナルゴールデングレイテストスーパーストロングゲートウェイ(仮称)

 駅を命名するゲーム.自分の番が来たら手札から駅名の構成要素*8が書かれたカードを場に出していき,それら全てを繋げた駅名を一息で二回言う(駅名のアナウンスは2回繰り返すものなので).これを繰り返していくと駅名はどんどん長く言いにくくなっていく.噛んだり息継ぎしたりするとお手つきとなり,お手つきを2回やったプレイヤーが出るとそのプレイヤーの負けでゲーム終了となる.

 兎にも角にも滑舌と肺活量が必要となる.急に早口になるオタクに優しく,早口になりすぎて噛むオタクに厳しいゲームである.

 語呂が良い部分に余計な構成要素を差し込んで噛みやすくするいう高度な戦術もあるらしいけれど,いかに素敵で親しみやすく住民の理解を得られる駅名にするかが大切だと思う(「ストロング」と書かれた札を「ゼロ」の前に差し込みながら

ソクラテス

 偉人を召喚して能力値でバトルし,聖杯を獲得するゲーム.偉人は左腕,顔と胴体,右腕,の3つのパーツに分かれており,それぞれに能力値と名前の一部が書かれている.召喚するときはとりあえずそれぞれのパーツがあればいいので,「ニコポレス一世」(ニコラ・テスラの「ニコ」,ナポレオンの「ポレ」,エリザベス一世の「ス一世」)等の「キメラティック偉人バトル」の名にふさわしいトンチキなアレが出てくることになる.

ルールはちょっとわかりにくかったりとかあったけど,面白さの本質はそこにはないのでいいと思う(ナイチンゲールの「チン」をどのように使うと面白いのか考えながら

コロレット

 同色のカードをたくさん集めると点が増えるアブストラクトゲーム.ただし,種類が増えすぎるとペナルティになるので,そこに取るや取らざるやの駆け引きが生じる. 妨害ありチキンレースありでなかなか奥深い.

Fab fib

 三枚の数字カードでできるだけ大きい数字を作り,裏向きにしながらぐるぐる渡していくブラフゲーム.数字の宣言は受け取ったときより大きなものにせねばならず,嘘をついてもよい.

 これまたルールが単純でコンポーネントも小さく,そこそこ楽しい.しかも大人数で遊べる.次買うならこれかなぁ.

Quarto

 変則4目並べ.色(白 or 黒),高さ(高 or 低),形(円筒 or 四角柱),穴の有無が異なる2^4=16種類の駒があり,これを4x4のマスに交互に並べていく.前述のいずれかの要素が同じコマが4つ並べば勝ち.ただし,置くコマは相手が指定するというのが面白い.

 頭を使ううえに,人間特有の要素の見落としが発生するのが面白い.その点で1vs1のゲームだがギャラリーも十分楽しめる.

 ギャラリーをやりながら「アッこれは自分は絶対勝てないやつだな……」と思った.実はこのゲームだけやっていない.

*1:ヘルメットはもげやすく事故の要因となる.鬼畜

*2:大きい人の意

*3:4vs4なら1つ,3vs3は兼務あり

*4:「大人のキッザニア」?お前がキッズになるんだよ!

*5:自分は熱くなりがちで常にできてるわけじゃないけれど,それでも……

*6:前回のダンゲロスゲーは去年の記事参照 ボードゲーム合宿でやったゲーム2018 - Aloestelic Site 3rd Edition

*7:鉄道のゲームは大体重い

*8:「光り輝く」とか「ゲートウェイ」とか

艦これの同人誌を作るまでに読んだ19冊+α

 昨年の冬コミで艦これ×英国艦使用人小説同人誌『お嬢様のこと』を出した.

 かなりニッチな本にもかかわらず幸いにも完売し,部数の見通しが甘かったためご好評をいただいて重版した.

www.melonbooks.co.jp

 小説は学術書ではないので参考文献というべきものはなく時代背景無視の雑な設定もたくさん入れてはいる.しかし,それでも嘘を飾るテクスチャは様々な本からいただいたものであるし何らかの形でリストを残したほうが良いのではと思った.また,「同人誌を作る際に資料はこれこれを使いました」と記録を残すケースでも,タイトルを列挙した参考文献リストあるいは単一の本の書評として書かれるのが主でコメント付きのリストという形にされることは珍しいように見える.……といった理由から,読んだ本と見た映像作品のリストをテーマ別に分類しコメントともに残そうかと思う.

英国の使用人

 侍女を語り手として選んだので,英国の使用人がどういうものだったかを調べる必要があった. これに限らずであるが,扱われている年代は幅広い.きちんと時代考証をやるならそこは当然留意する必要がある.私は気にせず食べられそうな設定は全部入れた.

英国メイドの世界

英国メイドの世界

英国メイドの世界

 これなしには語れない入門書にして決定版.参考資料には十分で,これより先は趣味と研究の領域と思われる. 情報量(600ページ超!)もさることながら,職種ごとに整理されているのが良い.ブックガイドが硬軟取り混ぜて楽しい&頼もしいのも重要. 読み終わる頃には更に踏み込むための知識と手がかりが手に入っているだろう.

 この後,調査し文章を書き進める上で海図であり母港となった本である.

おだまり,ローズ 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

 副題の通りの内容.語り口やエピソードの積み重ねに強い影響を受けた.登場人物は皆生き生きとして文章はウィットに富んでおり,読み物としても非常に面白い.個人的には2018年ベスト本.

日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 このエモさ,ノーベル賞級!(とても文化的なキャッチコピー)

 イギリスの荒野で文学賞の権威につられて読みはじめた軟弱者はエモの大波に飲まれて語彙を失い,保護されたときにはバスタオルにくるまれ焦点の合わぬ目で「エモい……エモい……」と呟くだけの哀れな生き物になる.執事ものの金字塔.

図説 英国メイドの日常

 豊富な図画を添えてメイドの暮らし,しきたり,当時の文化について書かれている.あたりまえのことだが,年代が書き添えられているのが非常に助かる.

 全般にふくろうの本シリーズは絵や写真が豊富かつそこに対応した挿話が書かれている資料集スタイルなので,「面白そうな設定やエピソードはどんどんつまみ食いする」というスタイルにはもってこいである.もちろん通して読んでも面白い.

英国の上流階級

 貴族のお嬢様を書かないといけないので,貴族の生活とはどのようなものだったか調べた.特にお嬢様は学校に通っている設定なので,そのあたりもケアしたい.

階級にとりつかれた人々

 ここから入った.どういう階級があって,どういう特徴があってというところ,とりあえず出発点の枠は押さえた感がある.

 清潔さ,丁寧さ,慇懃さといった洗練はミドルクラスの特徴であり,アッパークラスおよびアッパーミドルクラスはそれを忌避して線をひこうとした,という部分については(非常に興味深いものの)いわゆる「お嬢様」の通俗的理解と衝突する.これについて今回は我々日本人にとって容易に受容可能な「洗練されたお嬢様」概念を採用した.

イギリス紳士のユーモア

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

 ユーモアについて書かれた頁は実はそんなに多くなく,イギリス紳士の説明に割かれるところが多い.紳士の養成機関としてのパブリック・スクールについての記述あり.

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

 著者の思い入れが奔りすぎて話があっちゃこっちゃ行くな……というところはあるが,その熱意で詰め込まれた数多のエピソードにはインスピレーションを掻き立てられた.

図説 英国レディの世界

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

 良妻賢母,ミドルクラスの良い奥様を目指すには,という話が多い.すこしターゲットを外してしまったが無駄ではなかった.

図説 英国貴族の令嬢

 『英国レディの世界』が当たらずとも遠からずだったので貴族のお嬢様ならこちらのほうがテーマに近いかと思い買う.思惑通り.

 地位と敬称,呼称の対応表(伯爵の長女に対してLadyとつけるべきやMissとつけるべきや,等)が見っけもんである. 二次創作で誰が誰を何と呼ぶかというのは非常に気を使われるところであるし,呼び方で人間関係を表現できるので是非に押さえておきたい.

ダウントン・アビー

嵐の予感

嵐の予感

 映像というのは強力で,特に調度や立ち振舞いといった部分が強い.文章で描かれない隅々にまで情報があり,文字で読んだ知識をいい具合に補正・補完してくれる.また,人気のドラマシリーズに今更なに言ってんだという話だがドラマが面白い.アマプラで見られるので実質無料だというのも強い.

パブリック・スクール ――イギリス的紳士・淑女のつくられかた

 著者自身の経験に加えて,学校文学(学園モノ……というとちょっと違うかもだが)を引きながらパブリック・スクールとその内部の習慣や文化について紹介している本.女子のパブリック・スクールについても一章が割かれておりキマシタワーを建てる際の参考になる.

自由と規律 ―イギリスの学校生活

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

 パブリック・スクールが持つ厳しくも素晴らしい特質について著者の経験したエピソードを紹介して書かれている.芯の強いお嬢様を書きたいならぜひ買ったほうが良い.

 やや古い本でしかも著者の少年時代をベースに書かれているので,現代物をやりたいなら注意.私の場合は時代物なのでむしろウェルカムだった.

英国の海軍

 艦これはお船のゲームなので(たぶん).その背景について知識を深めるのは無駄にはならないはず.

女王陛下のユリシーズ号

 何度めかの再読.何度めかの感涙.名作名作アンド名作.

 影響されて同人誌の装丁をかなりハヤカワNVリスペクトな感じにした.あの半端極まりない高さを除いてだが.

Warspite

Warspite (English Edition)

Warspite (English Edition)

 QE級戦艦のHMS Warspiteについて書かれた本の中でも現在容易に入手でき,かつ非常に詳しく書かれたもの.Kindle版が安価.

 私は英語力と根気がゴミなため途中で投げた.だが,冒頭で歴代のWarspiteについて述べられていて,この部分だけでもインスピレーションがモリモリと湧いてくる.元はとった(負け惜しみ).

ダンケルク

 映像のパワーに殴られて「海は……海は広いな……」という感想が残った.ダンケルク撤退が英国民統合の象徴であり誇りでもある(「負け戦」をそう言うあたりが本当にいい)という話もあって,「祖国だ」の一言に心をボコボコにされる.凄い映画だ.

 海による分断,たち現れる戦場の奇跡という構図やラストの盛り上げ方はかなり影響された.

Rule Britannia!

Rule Britannia!

Rule Britannia!

  • The Central Band of the Royal British Legion & Captain David Cole
  • クラシック
  • ¥1500

 作業用BGM.表題曲はもちろん,みんな大好き"The British Grenadiers"や "Scotland the Brave" もあるぞ.

英国の女と女の感情

 百合は語るものではない.

荊の城

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

 読みましょう.

プリンセス・プリンシパル

第1話 case13 Wired Liar

第1話 case13 Wired Liar

 見ましょう.

エディトリアルデザイン

 表紙絵はできる人にお願いしたけど,組版やカバーデザインの仕事は残った.無論,DTPなどやったことはない.

小説同人誌のためのレイアウトデザイン

seiyo-shobo.booth.pm

 神のごとき同人誌.これ一冊で読むに堪える小説同人誌が作れる.DTP用語の説明からしてくれているので最初の一冊に良い.永久保存版である.

 特別付録でInDesign用のクックブックがあってこれがまたスクリーンショット豊富でわかりやすい.InDesignの体験版をダウンロードして途方に暮れた状態からスタートして一時間くらいでカッコいい版面ができる. Adobe CCに入っているようなソフトはどれも高機能で,その分野の概念から掴まねばならない人が一から理解して利用するのは困難である.そのため丸写しで様になる設定例は大変ありがたい.

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

 値札やお品書き等のファシリティ(?)については労力をかけて完璧にするよりも,無難なものを作りたいと思っていたので買った.期待していたことが書いてあった.平易でよい.

その他

夏の夜の夢・あらし

 HMS Arielを出すので.風精エアリエルに関する引用をやりたくて読んだ.しかし,結果としてあまりハマる台詞はなくて見送り.これ以外にもいくつかエピグラフ目当てで古典を読んだけれど,なかなかしっくり来るというのはなかった.しかし古典というやつは読んで見れば「いける,これは今でもいける」というのが結構あるもので,良い機会だったと思う.

艦隊これくしょん -艦これ- コミックアラカルト 舞鶴鎮守府編 十六

 資料というよりはモチベーションに近い物だが大きなリスペクトを込めて.これの最後に載ってる今井哲也先生の漫画が非常に良い.2017夏イベントを漫画にしたものなのだが,道中をほんの数コマでまとめる鮮やかさと,強く気高いWarspiteが良い.奇しくも同じイベント,同じ艦娘がテーマなのでリスペクトせずにはいられない.

 

 いざ同人誌を書いてみると,世の中には知らないことが多いものだと痛感する.図書館などももっと活用すればよかった.

ボードゲーム合宿でやったゲーム2018

 週末にお友達と温泉でボードゲーム合宿をしてきましたので遊んだゲームについて報告します.

 なお,記事中の写真はおっさんの手足の写ったやつとはいふりカメラで撮ったやつしかなかったのではいふりカメラのものを使用しています.可愛らしいはいふり画像をお楽しみください.

Wealth of Nations

 個人的には世界で一番面白いと思っているボードゲーム.農園(食料)・発電所(電力)・学校(労働力)・鉱山(鉱石)・資本(資本)・銀行(現金)の6種類の生産設備と資源を所有し,生産し,貿易して金を稼ぐ.席順以外のランダム要素なし・完全公開情報・拡大再生産&貿易バーリトゥードというハードコア資本主義ゲームである.
 この手の重量級ゲームにしては少ないコンポーネントと単純なルールで需給バランスや通貨供給量によるマクロ経済への影響を表現できている秀逸なボードゲームであり,「どこかで見たぞこの経済情勢」という状況がプレイのたびに立ち現れるのが魅力.「作ろう君の失敗国家!」を合言葉に一家に一台ほしいくらいの良ゲーなのだが,現在ではプレミアがついておりPS4 Proみたいな値段になっている.おのれ資本主義.

 今回は6人プレイで発電所を取ってゲームスタート.しかし,タイルを近くに配置されて土地がなくなり,頼みの綱の電力事業にもどんどん参入されてひどい状況に.中盤に血を吐きながら債券を乱発をして金融業に参入し現金をウォンウォンと印刷しだしたところ状況は劇的に改善.電力の高騰にも助けられて終盤かなり巻き返すことができたがタイで2位という結果だった.結局土地の狭さが最後まで効いてタイル数が伸び悩んだのが敗因か.もう一ラウンドあれば勝っていたのになぁ.
 終盤まで人件費が高騰していたにもかかわらず学校への参入者がほとんどいなかったため,勝ったのは学校を独占していたプレイヤーだった.善戦した方ではないかと思うし,電力→金融という好きな戦術を決めた上で「工場建てるより金刷ったほうが強くないですか?」という金満ロールプレイもできたので,2位ではあったものの概ね満足の行く2位であったと思う.

f:id:maruiboushi:20181113223642j:plain

 写真は中盤のもの.私が担当するAnglica(英国相当:白地に緑十字のフラッグ)は決然として現金印刷業務(銀行:紫色のタイル)に邁進している.

SCYTHE

 1920年台の架空の東ヨーロッパを舞台に二足歩行機械(メック)を用いて覇権を争うゲーム.キービジュアルがドチャクソかっこいい上にコンポーネントが凝っている.メックや民族指導者の精緻なプラスチックフィギュアが入っている上に木製のミープルも勢力ごとに形が異なっていたりととにかくゴージャス.ボードも工夫が凝らされており触っているだけで多幸感に襲われる.

 ゲーム内容としてはアクションを選択してメックを配備したり移動したり生産したりしてVPを稼ぐもの.その辺りはオーソドックスな重量級ゲームと言ったところか.とにかく要素が多いのでプレイ時間がひどいことになりそうなものだが,プレイヤー間での干渉が思ったよりないので意外とスピーディにゲームが展開するのがありがたい.

 5人プレイでポーランド風の国を担当.特殊効果が遭遇イベントカードの効果を2つ選べるというものだったので,メックを配備して移動力を増やしつつ指導者があっちこっち行って遭遇イベントカードをめくるプレイに終始.ただ,ドイツ風軍事国家がゲームを終わらせに行ったので普通に追いつけず負けた.2位だったものの,後からVP計算のルール間違いに気づいたから実の所はたぶん3位以下だったと思う.
 面白いには面白かったのだが,要素が多すぎてどの要素がどこまで勝利に貢献したのか(あるいはどの要素が勝利に貢献できなかったのか)がよくわからなかった.もう少し色々遊ぶとまた変わってくるのではないかと思う.

f:id:maruiboushi:20181113223651j:plain

写真は点数計算時のもの.

戦闘破壊学園ダンゲロス ボードゲーム

 同名小説およびその関連作品をクラウドファンディングボードゲーム化したもの.あらゆるテイストが狂っており下品で下劣で最低(以上4ついずれも褒め言葉)なのだが,それはいずれも原作の忠実な再現によるものである.

 探索フェーズと決戦フェーズに分かれており,探索フェーズで集めた仲間の魔人を並べてゲームの勝者を決めるべくバトルロイヤルの決戦フェーズを闘う.Lvの高い魔人ほど強く,倒した魔人を仲間にするという構造上どうしても探索フェーズは正のフィードバックがかかるのでプレイヤー間で差がつく,おまけに決戦フェーズに参加できる魔人の数も探索フェーズでボス魔人を倒した回数が多いほど多い.
 これでは流石に一人が強くなりすぎてバランスが悪かろう……と思いきや決戦フェーズはバトルロイヤルなので優勝候補と目されるプレイヤーは集中的に攻撃されてひどい目にあうので勝手に辻褄があう.また魔人の特殊能力がLv問わず基本的に強く,所詮はダイスゲーなのでジャイアントキリングが連発する.大味ながらもバランスが取れてしまうのはこのあたりのゲームメカニクスも貢献していると思われる.いかにもダンゲロスらしくてとても良い.

 4人で遊んだ際は探索フェーズも順調に進み,決戦フェーズにおいても最大のライバルと目されたプレイヤーが早々に全滅.相手はLv1と2の魔人のみでこちらは戦闘向け特殊能力を有したLv3という「勝ったな」「ああ……」みたいな状況になったのだが,お約束のように出目で負けた.しかも相手は「まるだし刑事」.クソすぎる(褒め言葉).

進撃の巨人 ボードゲーム

 同名の大人気漫画のゲーム化.巨人側プレイヤー1人対人間側プレイヤー残り全員の特殊な対戦ゲーム.人間側プレイヤーはダイスを振ってその目を使いつつ巨人を倒すことを試みる.直立する巨人や組み立て式の塔,専用のダイスを始めとするコンポーネントインパクトがあるが,実際はただのトークン置き場でありこれ平面でよくね?感が漂う.でもな,平面機動じゃカッコがつかねぇからよ……そのコンポーネントは必要なんだよ……

 ゲームは5人でやって,まぁなんか普通に巨人を倒せた.

 余談だが,グループ内で『進撃の巨人』を読んだことがあるやつよりも『戦闘破壊学園ダンゲロス』を読んでるやつのほうが多かった.治安が悪い.

プールパーティ

 プラスチック製のカードを指で弾き,バネで支えられた受け皿にたくさん載せたら勝ちというゲーム.ルール説明が1分で終わる.
 平均年齢3x歳の男性(全員素面)が4人でキャッキャ言いながら一心不乱にプラスチック製のカードを弾いている様はちょっと頭がアレしてしまったのかなという光景であるが,プリミティブな面白さがあるゲームだから馬鹿にしてはいけない.欠点はプリミティブすぎて3分くらいで飽きること.

ペンギンパーティ

 手札から5種類のペンギンカードをルールに沿ってピラミッド状に並べていき,できるだけ多く置くことを目指すゲーム.場の空気を読んでカードを出していく必要があり,妨害は必要だがあまり妨害しすぎると自滅するという定番のジレンマがある.今年の「単純なルールながらも大当たり」アワード*1は間違いなくこれ.

ナショナルエコノミー・メセナ

 去年やったカードゲーム『ナショナルエコノミー』の新版.拡張ではなく単体で遊ぶ用.ルールは前とほぼ同じ.ワーカープレイスメントゲームだが労働者に賃金を払うのが辛い.
 3人プレイを2回やって両方とも大聖堂を建設し勝利点トークンを稼ぎに行くが,いずれも2位.『ドミニオン』でも思ったけど自分は勝利点トークンという単語に過分のロマンを見出しているように思える.

顧客が本当に必要だったものゲーム


 顧客の要求に応じて情報システムという木を伸ばしていくゲーム.だいたいカオスなシステムができ,担当者の評価は「やった感」*2で決まるというリアル.顧客という体で出てくるインターネット有名人のイラストが上手くていちいちイラッとするのだがイラストを見てだいたい「元ネタこいつだろ……」って分かるような人間はインターネットのやりすぎなので直ちに野菜と運動と瞑想が必要だと思われる.恐ろしい恐ろしい.

 今回の合宿で他のゲームでは一位になれなかったが,これについては圧勝してシステムエンジニア(システムをエンジニアリングできるとは言ってない)の意地を見せつけることができた.勝てるゲームは良いゲーム.忘れちゃダメだよ.

*1:一昨年は『ピット』去年は『ReCURRRing』

*2:このゲームにおけるVPはそのように呼称される

2017年のアニメ個人的ベスト

順調に虚無に近づいていったが,働き方改革で余暇が少しずつできつつあるので,来年はもう少し虚無から離れるようにしたい.

第1位:プリンセス・プリンシパル

完全勝利.何兆点あるのこれ.

久しぶりに自分の趣味にクリーンヒットするアニメを見た.大体5年おきにこういうスマッシュヒットが来る(2001年に『NOIR』,2006年に『シムーン』,2011年に『魔法少女まどか☆マギカ』)ので,そういうものなのかと思う.

こういうスタイリッシュで画面が暗くてビターなストーリーと顔の良い女同士のデカい感情があって梶浦由記の音楽が大音量で流れるアニメを待っていたというのもそうだが,キャラクターの魅力,特にプリンセスとアンジェの関係性に強く惹き込まれた.こういったものはそのカップリングで二次創作が出回ることも多い.絵だとわりと「いいよね」って思うものがあるんだけど,マンガや文章となると急に偏屈になって「お前にプリンセスのなにがわかるんだよ……」というブーメランをブンブンと投擲したくなる.

今年の煩悩今年のうちに,ということで,私の中でのアンプリの書き下しを試みようと思う.

まずアンジェからプリンセスへの感情,これはCase 20で明言されたように「敬意」だ. たぶんこの敬意は尊敬の敬と隔意の意をあわせて出来たものである.運命のいたずらにより自分が生きるはずだった人生を生きた女性,自分が考えていた苦難多き道を(より困難な状況の中)ほぼ完璧に歩んでいる人間への尊敬.それはもちろん能力についてのところもあるだろうが,何よりもそれを成し遂げさせた意志に対する尊敬を大いに含むものであろう.そしておそらくその原動力が自身であることに,アンジェは何とも言えない罪悪感か居心地の悪さを覚えているように見えた.そのあたりを押し込めたのが「敬意よ」という言葉であったように思う.

次に逆向き,プリンセスからアンジェへの感情はちょっといい言葉がない. プリンセスからシャーロットへの感情ということになればこれは良くて「半身」,実際は「自分自身」に近いのではないか.プリンセスの行動のうちどこまでがプリンセスの意志で,どこまでがシャーロットの意志なのかというのがよくわからない.もしかするとプリンセスの意志というのは,「内面化・理想化されたシャーロットの意志を貫き通すためにあらゆる努力を惜しまない」ことなのかもしれない.このクッソ重い感情を糧に覇道を邁進していくプリンセスははっきり言って最高に魅力的なキャラクターだと思うし,この一点だけでさえ今年最高のアニメに届くポテンシャルを秘めている.

では,プリンセスの今のアンジェに対する感情だとすると,これはよくわからない.同志であり共犯者というのもあるだろうが,Case 23ー24を見る限りはやはり甘えというか,当然自分と同じ考えに至る,必ず助けてくれるという確信に近い思い込みがあるように思われる.だってシャーロットは自分だもんね.仕方ないよね.

ではアンプリはキテルのか.両者の間に恋愛感情はあるのか.たぶんない.でも上記のデカい感情が何かの拍子に恋愛感情と同じ位相になってしまって誤認識するシチュエーションはあり得ると思うし,それは美味しいと思う.

アンプリにしか言及してないが,それで持っているエピソードは決定的に重要なエピソードを含むものの全体から見れば半分もない.ドロシーとベアトとちせと,他にも多くの魅力的な登場人物がいて魅力的な人間関係があるのだけれど,そこは読み込みが足らないのでまだうまいこと言語化できていない.

そしてその外側にはきちんと組み上げられた技術があり社会があり政治がある.その中のダイナミズムとして本編のストーリーがある.そこもまだ全然読み込みが足らない.

ああ,全く,私はこのアニメのことがよくわからない.「尊い」に逃げずに,もうちょっと何回か見ようと思う.

その他

次点は『けものフレンズ』.理由は人類の基本的な価値が詰まってるから. 賢くあることと他者への思いやりがあること,これらは本来は相反するものではないはずだ.でも,「わーい」「たーのしー」といった無知で無垢な雰囲気を出さないとその辺の基本的な価値を受け入れることを「嘘くさい」と思ってしまう.それはよくないことだと思う.

ほかもシンフォギアAXZとかナイツマとかアルタイルとか見たものはどれもそれなりに面白かったけど,プリプリが全部持ってってしまった.

ボードゲーム合宿でやったゲーム

先日,ボードゲーム合宿で結構ボードゲームをやったので感想を書く

Diceforge

ダイスの面を購入し組み替えていく拡大再生産ゲーム.

かなり面白かったのだけれど,卓を囲んだ人間の言動が怪しかったのが明確な加点要素になっている.本当は「太陽の力」と「月の力」なんだけど,みんな精神が中学生だから「光のパワー」「闇のパワー」で定着していた.おかげさまで「闇のパワーが高まってきた」とか「光と闇が合わさり最強に見えるので24点」といった,ポップでコクのある言動が楽しめた.

ゲーム自体は中級者向け(それなりにルールは単純で頭を使うわけでもないが,ゲーム慣れしていないと要素が多すぎてつらそう)で,大味なところもあるけど,ダイスを組み替えたり振ったりというフィジカルなとこが楽しいから楽しい.

そしてコンポーネントが凄くいい.偏執的とさえ言って良いこだわりで,すべての要素に収まりどころがあるようにコンポーネントが作ってある. こう,みっしりと匣に詰まっている感じですっかり欲しくなってしまった.でも箱がでかい.

クレムリノロジー

粛清や勲章などのイベントで変化するソ連高級幹部の序列を当てる推理ゲーム.公開情報と機密情報を総合して推理する.

非常に楽しいRPG.起きた事象と現実世界のイベントと唐突にリンクしたり色々想像が湧いてきて楽しい. 苦労して手に入れた機密情報が一瞬で公開情報になったりする無情さがインテリジェンスっぽい(らしい). 公開情報と同じ機密情報ばかり回ってくる状況がOSINT呼ばわりされてて草.

ただ,ゲームとしての面白さがランダム要素に左右されるところはある.読み切れてしまっても面白くないし全然わからず当てずっぽうになるのも面白くない. この間にある楽しいレンジにプレイヤーの資質と出目でどの程度とどまることが出来るのかってのがまだよくわからない.もうちょっとやりこめば見えてくるのかもしれない.

これ以上は情報不足だからランダム,というところまで読めてしまうとゲームとしての面白みが減ってしまうので,プレイヤー間の処理能力に大きな差がない限りは最終ターンだけでなくターン毎の時間制限を適切にセットしたいところ.

ぱんつぁー・ふぉー 2

ガルパンのウォーゲーム.Area to Area型のマップで小隊単位の戦車戦をする.

一回目はカードの引きがひどくてダメだったんだけど,二回目やったら接戦な上にまほエリだったので滾った.

「冬の寒さを表現するときに,どんな美麗なグラフィックよりも1移動力多くかかるほうが雄弁なこともある」という趣旨のゲーム評論を読んだことがある.まさにそれだった.完全なまほエリだった.隊長の盾となるエリカの姿がありありと見えた.約束された勝利のまほエリだった.そもそもアニメですら供給を絞られ気味のまほエリをゲームとして己の判断の下に再現できるのである.とてもイマーシブな体験で,とてもエキサイティングだった.

ゲームとして楽しい上にプラスアルファでロールプレイの楽しみがあるお得なゲームだといえる. ロールプレイとしての楽しさを引き出すのならガルパンへの愛がそれなりに必要となるだろうが,劇場版を複数回見に行ったくらいのごく平均的な愛があれば大丈夫だと思う.

ツォルキン

時間軸での計画性を要求されるワーカープレイスメント.ターンベースで駆動する歯車コンポーネントがイカス.

ワーカープレイスメントは失敗を噛みしめるゲームが多いが,ツォルキンは常に失敗を噛みしめるゲーム展開が続く. 「しくじった」「ああしていれば」という後悔と敗北を巻き込んで歯車は回っていく.

こんなにしくじりまくっているのは,Nターン後の行動について精緻な計画を立てるのが苦手という私の性格によるものである.方向性を決めて丼ぶり勘定で進みつつ微修正を重ねてやっていく,というスタイルが通用しない.つまらないゲームではないが得意ではない.

ReCURRRing

場札よりも強い手札と場札を交換し続けていくカードゲーム.枚数と数字の2つのパラメタで強弱が決まる.

シンプルなのに独創的で奥深い.手作りをするかそれとも利益を狙うかという判断の醍醐味が楽しめる.ルールも単純で教えやすいしカードゲームではピット以来の当たりかもしれない. 盆正月に麻雀が立つご家庭には間違いなくおすすめできる.

ループの中で2つの変数が増えたり減ったりして条件を満たして止まるところがちょっと計算機科学っぽい感じがあって萌える.

何にせよこれは遊び足りないところがある.もうちょっと遊んで判断の感覚をつかみたい.

ナショナルエコノミー

ワーカープレイスメント・カードゲーム.色々珍しい.

つらーい!たーのしー!

ワーカープレイスメントは苦しみを抱えて生きるゲームが多いが,これも常に苦しみを抱えて生きるゲーム展開が続く.維持費で血を吐くのがワーカープレイスメントの醍醐味である. では給料の要らない労働者は経営者の永遠の夢なのか?というところで否となるのがこのゲームの面白くもユニークなところ.

独創的な「家計」のメカニズムがとても良い.労働者への賃金が市場(家計)を形成するという見立ても好きだけど,家計にあるお金の量で駆け引きが生じるのが良い.供給が少ない内に供給したほうが有利,という需給による価格変化を二値で実現してると言えなくもない.WoNで調教されたからってのもあるけどこういう市場メカニズム好きだなぁ.大好き.

みんなまだそんなにやりこんでなかったので,労働者一人が出せる利益って点でクレバーになりきれない(終盤は原則として建設よりも家計に売るほうが効率がいいんだけど建てちゃう)ところがあって,この辺はまだロマンという名の錯誤が生きてたなぁという感じではあった.手札のマネジメントが難しいのでもうちょっと練習したいところ.

最後にこれは好き嫌いなところもあるけど,箱がコンパクトなのがとてもいい.アメリカも都市部はめっちゃ家賃高いらしいけど何でメリケンのゲームはあんなに箱がでかいのか? 住宅事情への心配りもニクい,天晴な国産ワーカープレイスメントだった.

ICE COOL

ペンギンを指で弾くゲーム.コンポーネントがよい.しかし,指が痛い.

ナンジャモンジャ

変な生き物に付けた名前を覚えるゲーム.若いやつが強い(結論)

Dice Stars

ダイスを振って選び,出目とダイスの色を用紙に記録していって上手いこと用紙を埋めた人が勝つゲーム. この合宿でね,私は全然勝てなかったんですよ.だいたいどのゲームも2位以下でね.でも,これは1位になれたんですよ. 勝てるゲームはいいゲームですね.