ボードゲーム合宿でやったゲーム2019
先週末に今年もボードゲーム合宿に行ってまいりましたので,そこで遊んだゲームを紹介します.例によって写真ははいふりカメラでお送りいたします.
今年はチーム戦ゲームとバランスゲームを比較的多くやった気がします.
メン・アット・ワーク
めくられたカードの指示に従って建材や労働者を積み重ねて配置していくバランスゲーム.物を落とすと事故として安全証明が取り消され,3回で指名停止(ゲーム除外)になる.カードによりなされる建築指示は基本的に鬼畜であり,すごい勢いで事故が起きる.構造物の高さを更新すると勝利点をくれる頭の悪い(褒め言葉)現場監督の存在も鬼畜現場を加速する.
写真のとおり,ヘルメットをかぶったミープル*1,組み立て式のクレーンなどコンポーネントも豪華で全体的に満足度が高い.
バランスゲームの常として,手番終了時に一定時間待って構造物が安定した状態にあることを確認するという営みが必要になるが,このときにみんなで構造物を指差して「ヨシ!」と言っていた.ロールプレイはバッチリ,卓の合意も取れるしバランスゲームにおける指差し確認は有用ではないかと思う.
まぁ,ヨシ!したあとに人間が足場から落ちることとか結構あったけど,「あれは現場に入る前の事故でうちの責任じゃない」みたいな処理がなされていたので,やっぱりロールプレイはバッチリだった.
キャプテン・リノ
カードと厚紙で塔を建てるバランスゲーム.ゲーム所有者からルールとカードの説明を受けて,
「ほーん,なるほど簡単で子供でも楽しめそうなゲームっすね」
と言っていたら,所有者が
「いや……このゲームはやめよう.ルールも単純だしこんなの子供でもできるゲームだ.俺たちは大人だから……大人のゲームをやる!!」
と声高らかに宣言し,絵柄がまったく同じのクソでかい箱を出してきた.この時点であまりのでかさにフロアは興奮の渦に飲み込まれた.
バカでかい箱を開けるとA5サイズのカードと15cmはあろうかといううすらでかいミープルが出てきて「うわぁー!でけェー!」と大興奮する3x歳児たち.そんなサイズのものをどんどん積んでいくと簡単に身長を超えてしまって著しく積みにくくなるため「身長が低いと不利……なるほどこれは……大人*2のゲームだぜ!」となった.頑張れば3mくらいまで積めるらしい.
でかいものはクールだ,と思った.
キャプテン・ソナー
(これこそはいふりカメラで写真を撮るべきゲームだったのに撮り忘れたので写真無しでお送りします)
チーム対戦型潜水艦ゲーム.屏風のような長大な衝立を挟んで両チームが相対し,ターンベースで交互に行動を宣言していく.相手チームの行動宣言から位置を推測し,先に相手を撃沈したほうの勝ち.なお,上級者向けにターンによらず行動宣言ができるリアルタイム制もあり.
プレイヤーは艦長,通信士,航海士,機関長の4つの役割のうちひとつ以上*3を担当する.役割は以下.
- 艦長:最終的な行動の決定と行動宣言をする
- 通信士:相手チームの行動宣言から相手の位置を推測し,艦長に情報を上げる
- 航海士:潜水艦の装備(ソナー,魚雷,等)の準備をする,艦長の補佐をする
- 機関長:行動のたびに艦のあちこちが壊れるので,壊れても装備が動くようにダメコンをする
このゲームのすごく良いところとして,ロールプレイがデザインにしっかり組み込まれていることがある.このゲームでは艦の破損状態が行動宣言をするうえで非常に重要(破損状態は行動を制約し,行動は破損状態を変化させる)なのだが,機関長(今後の行動を阻害しないように破損状態に介入する)と艦長(破損状態も見て今後の行動を決める)の間に航海士が挟まれるような席順となっており,極めて重要な機関長ー艦長の間のコミュニケーションが阻害されるようなつくりなっている.わざとそうしているらしいのだがこれは大変すごい.兵科将校と機関将校の二系問題とかを連想して胸熱である.
もちろん「艦長!座標を」「座標2-B!」「復唱!座標2-B,魚雷装填,注水開始」とか「注水音!(悲鳴に近い報告)」とかそういう全人類がキッザニア*4でやりたいロールプレイもできるので安心だ.
自分がやったときは通信士をやったのだが,相手の行動宣言を聞き逃さないようにしつつ,過去の行動宣言の記録やソナー情報の記録と照らし合わせて敵の位置を絞り込みつつ,艦長とコミュニケーションをとらないといけない.シングルコア性能もマルチコア性能も要求されて頭がパンクしそうだった.ターン制でこれなのでリアルタイム制で通信士に求められる処理能力たるやいかほどのものか.
しかも判断ミスできないというプレッシャーがあるわけで,自分の耐性もさることながら,チームメイトにプレッシャーを掛けないという心理的安全に配慮した行動も求められる.というか,友達と楽しくゲームをやるんだからそれは義務でよいと思う*5.
とまぁ,アツくて面白いゲームなんだけど認知能力と人間性を兼ね備えたゲーマーを8人 or 6人とデカい机を揃えないと遊べない……というハードルの高さこそが最大の欠点ではなかろうか.ただ,そのハードルに見合った体験はある.まさにオンリーワン.超おすすめ.
デクリプト
2チームに分かれて相手チームの暗号を解読する特殊な連想ゲーム.
チーム内の一人が暗号役,残りが解読役となって,暗号役は自分だけが知っている平文(1ー4までの数字3文字)を暗号化して公開する.敵味方とも解読役はそれを復号することを目指す.暗号化アルゴリズムは「平文の文字をキーワードから連想した表現に置き換える」であり,暗号鍵(1-4までの文字と1:1対応するキーワード)は味方内で共有されている.この条件下で暗号役は敵チームの解読役を惑わし,かつ味方の解読役が一意に復号できるような暗号化を考えることになる.攻守を交代して繰り返しつつ,相手チームの暗号役が伝達しようとしている平文を2回当てれば勝ち,味方チームの解読役が復号に2回失敗すると負け.
この暗号化が実に難しい.暗号鍵は固定&暗号文と平文のペアは解読役の予想発表後に公表される&過去に使った置き換えは禁止,というルールなので,安易な連想ばかりしているとまたたく間に鍵がバレてしまう.鍵についての情報を増やさない(=似た方向性の)連想を続けていると鍵でなく直接平文を当てられる,ひねった連想は短期的には強いが長期的にはピンポイントで鍵を特定される……とどう暗号化しても辛い.鍵を知っていないと(=つまり味方でないと)特定できないようなふわっとした表現が良いわけだが,暗号化に30秒の時間制限があるため,そんなうまい手をそうそう思いつけるものではない.持ち回りとはいえ暗号役はプレッシャーがやばいので,相手ターンや解読中に次の表現を考えておかないと辛いかもしれない.
非常にユニークで面白いゲームだと思う.
シュタウファー
6つの都市に自派の人間を送り込み,議席を獲得して勝利点を稼ぐワーカープレイスメント.
コストの払い方やターン順の決め方がちょっと特殊で,ワーカープレイスメントといえば拡大再生産!みたいなこともそんなになく,淡々としている.王様(ホーエンシュタウフェン朝のハインリヒ6世)が巡察した領国では議席獲得に払ったコストが戻ってくるのでそのあたりを計算しながら手駒をぐるぐる回していく.
ターン毎に王様がどこに行くか,どこの領国で精算(議席を勝利点に変換すること)が行われるかという重要情報がゲーム開始時にすべて決まって公開されるので,「Nターン後はどうなるか,それを見込んで今は走るかそれともしゃがむか」みたいな判断がしみじみと楽しい.そこにワーカープレイスメントならではのままならなさが積み重なるわけで,絶妙なやっていき感がある.良い.
— Aloe!/feeblemind@C97日曜西N-38b (@maruiboushi) 2019年10月22日
となって衝動買いしたやつだけど,結果から言えば買って正解.面白かった.ただ,それなりにゲーム慣れした人相手でしか遊べないゲームなので,二度目を遊ぶ機会はあるんだろうかという感じ.
5人でやって圧勝といえる勝利を達成.途中の議席獲得では領国精算時の勝利点を目的とせず,最終精算で使う勝利点と議席ボーナスを狙いに行ったのが奏効した.巡察を計算に入れて効率よく手下を使い回せたのも良かった.勝てるゲームは良いゲーム(一年ぶり三度目).
ザバンドールの鉱山
典型的な拡大再生産ゲームに競りの要素が入ったもの.宝石を採掘し,宝石で採掘手段や勝利点を獲得し,宝石でそれらを強化する. 3人でやって2位.やや淡白だけど面白い.『ザバンドールの笏』もそうだがこのシリーズは悪くないしそつなく面白いんだけどどこか淡白で影が薄いところがある.
熟練すればもうすこしまともに戦えそうな気がした.
ダンジョンズアンドダンゲロス
我々はなぜ合宿でダンゲロスのゲームをやろうとするのか?*6持ってくるやつがいるからさ……
プレイヤーがキャラクターを保有し,協力しながらダンジョンを潜っていくゲーム.『ディセント』っぽい感じというかGM不要のTRPGっぽい感じというか. スマートフォンでQRコードを読み込むとWebアプリが起動し,ノベルゲーっぽい感じでシナリオが提示される.イベントの処理(どういうモンスターが出てくるか)もそのWebアプリが教えてくれる.ガジェットとの連携は流行りの感じだけれど,なかなか力が入っており,ちょっと感動した.
ルールはダンゲロスらしい大味さというか,サイコロの出目と固有能力でなんとかなる!というやつで,だいたい酷い(褒め言葉).「このルールの説明がない!」「巻末のサマリにだけ書いてあったわ……」みたいな事が多く,その上でバランス(特に時間制限)が普通にシビアなので普通にタイムオーバーで負けた.D&Dや世界樹の迷宮なら絶対にやらないようなクソ迂闊ムーブで悶死したので悔しかったが,シビアでないダンジョンなんて玉葱の入ってない牛丼みたいなもんなので満足いく負けではある.楽しかったしいずれ再挑戦したい.
Wealth of Nations
私自身はただのプロレタリアートだが,一年に一度くらいは資本家の気分が味わいたいのでやった.
どういうゲームかは 去年の記事参照. maruiboushi.hatenablog.com
以下はプレイログ.
4人プレイ.なんかスタートタイルで資本と電力の生産タイルが残ってたので取った.毎回ワンパターンな戦略(資本と電力から銀行を目指す)だと思うけど,遅めの順目で残ってたわけで,取らない勝ち筋が見えないし取るしかなかった.スタートプレイヤーが食料ー食料の生産タイルを取ったり,労働力を取ったプレイヤーが生産できるのに生産しなかったりと,場は大荒れに荒れた.ボジョレー・ヌーヴォーのごとく「つらい」「今までのプレイで一番つらい」「最高につらかったと言われる3年前のWoNに匹敵するつらさ」と,だいたいやるたびにつらいが今回もやっぱりつらい.
労働力が生産停止で暴騰したため食料プレイヤーが労働力に噛みに行って,生産した労働力を使って旗を置ききってゲーム終了.資本独占&電力もそこそこ高かったため堅調に推移,生産タイル数も現金もそこそこ稼げてはいたもののやはり生産タイル数で追いつけず4点差で2位.もう1R回ってたら……と思うけれど,そもそも終了の権利を握られた時点で勝ち目はなかったわけで.善戦したにはしたが,これだけ有利な条件で馴染んだ戦略を使ってさえ2位に甘んじたというのはやっぱり悔しい.勝てるゲームは良いゲーム,悔しいゲームも良いゲームだ.
今回の教訓としては以下.何を今更な話ばかりだけど,改めて実感.
- Win-Winで回っていくゲームなので,意図的な生産停止(Lose-Lose)はかなり不利になる
- 価格の吊り上げは吊り上げすぎると新規参入を招くので危険
- 労働力(赤)は序盤高騰,中盤暴落,終盤でちょっと戻すという値動きをしがちで交換価値が微妙な資源という印象なのだけど,自家消費してゲームの終了権を握る(あるいはそれをプレッシャーとして利用してゲームを有利に展開する)という勝ち筋がある
- 過去にそんなような議論をした記憶はあるが,赤をからめた速攻がここまで綺麗に決まったのは初めて見た
- 4人で遊ぶのとても楽しい.5人以上は狭すぎる.3人だと交渉が微妙.
Trans America
北米大陸に線路を引くゲーム.アメリカ全土に散らばる目的地(プレイヤーによって異なり,秘匿されている)を目指して線路を引いていき,最初にすべての目的地にたどり着くことを目指す.相互乗り入れによって他プレイヤーの引いた線路を使うのが勝利の鍵.共有リソースを利用して秘匿された目的地を巡回するという点で『エクスペディション』に近い手触りがある.
デカいゲームボードと鉄道*7というテーマに「すわ,重量級か!?」と戦慄が走るも,インストもプレイも軽く,人数のバリエーションも効く優秀なゲーム.今年の「単純なルールながらも大当たり」アワードはこれ.
なお,アメリカ中の都市の名前が出てくるのでちょっぴりアメリカの地理に詳しくなれる.シアトルってあんな端っこだったんだなぁ……
光輝く高輪アンリミテッドエターナルゴールデングレイテストスーパーストロングゲートウェイ(仮称)
駅を命名するゲーム.自分の番が来たら手札から駅名の構成要素*8が書かれたカードを場に出していき,それら全てを繋げた駅名を一息で二回言う(駅名のアナウンスは2回繰り返すものなので).これを繰り返していくと駅名はどんどん長く言いにくくなっていく.噛んだり息継ぎしたりするとお手つきとなり,お手つきを2回やったプレイヤーが出るとそのプレイヤーの負けでゲーム終了となる.
兎にも角にも滑舌と肺活量が必要となる.急に早口になるオタクに優しく,早口になりすぎて噛むオタクに厳しいゲームである.
語呂が良い部分に余計な構成要素を差し込んで噛みやすくするいう高度な戦術もあるらしいけれど,いかに素敵で親しみやすく住民の理解を得られる駅名にするかが大切だと思う(「ストロング」と書かれた札を「ゼロ」の前に差し込みながら
ソクラテスラ
偉人を召喚して能力値でバトルし,聖杯を獲得するゲーム.偉人は左腕,顔と胴体,右腕,の3つのパーツに分かれており,それぞれに能力値と名前の一部が書かれている.召喚するときはとりあえずそれぞれのパーツがあればいいので,「ニコポレス一世」(ニコラ・テスラの「ニコ」,ナポレオンの「ポレ」,エリザベス一世の「ス一世」)等の「キメラティック偉人バトル」の名にふさわしいトンチキなアレが出てくることになる.
ルールはちょっとわかりにくかったりとかあったけど,面白さの本質はそこにはないのでいいと思う(ナイチンゲールの「チン」をどのように使うと面白いのか考えながら
コロレット
同色のカードをたくさん集めると点が増えるアブストラクトゲーム.ただし,種類が増えすぎるとペナルティになるので,そこに取るや取らざるやの駆け引きが生じる. 妨害ありチキンレースありでなかなか奥深い.
Fab fib
三枚の数字カードでできるだけ大きい数字を作り,裏向きにしながらぐるぐる渡していくブラフゲーム.数字の宣言は受け取ったときより大きなものにせねばならず,嘘をついてもよい.
これまたルールが単純でコンポーネントも小さく,そこそこ楽しい.しかも大人数で遊べる.次買うならこれかなぁ.
Quarto
変則4目並べ.色(白 or 黒),高さ(高 or 低),形(円筒 or 四角柱),穴の有無が異なる2^4=16種類の駒があり,これを4x4のマスに交互に並べていく.前述のいずれかの要素が同じコマが4つ並べば勝ち.ただし,置くコマは相手が指定するというのが面白い.
頭を使ううえに,人間特有の要素の見落としが発生するのが面白い.その点で1vs1のゲームだがギャラリーも十分楽しめる.
ギャラリーをやりながら「アッこれは自分は絶対勝てないやつだな……」と思った.実はこのゲームだけやっていない.