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艦これの同人誌を作るまでに読んだ19冊+α

 昨年の冬コミで艦これ×英国艦使用人小説同人誌『お嬢様のこと』を出した.

 かなりニッチな本にもかかわらず幸いにも完売し,部数の見通しが甘かったためご好評をいただいて重版した.

www.melonbooks.co.jp

 小説は学術書ではないので参考文献というべきものはなく時代背景無視の雑な設定もたくさん入れてはいる.しかし,それでも嘘を飾るテクスチャは様々な本からいただいたものであるし何らかの形でリストを残したほうが良いのではと思った.また,「同人誌を作る際に資料はこれこれを使いました」と記録を残すケースでも,タイトルを列挙した参考文献リストあるいは単一の本の書評として書かれるのが主でコメント付きのリストという形にされることは珍しいように見える.……といった理由から,読んだ本と見た映像作品のリストをテーマ別に分類しコメントともに残そうかと思う.

英国の使用人

 侍女を語り手として選んだので,英国の使用人がどういうものだったかを調べる必要があった. これに限らずであるが,扱われている年代は幅広い.きちんと時代考証をやるならそこは当然留意する必要がある.私は気にせず食べられそうな設定は全部入れた.

英国メイドの世界

英国メイドの世界

英国メイドの世界

 これなしには語れない入門書にして決定版.参考資料には十分で,これより先は趣味と研究の領域と思われる. 情報量(600ページ超!)もさることながら,職種ごとに整理されているのが良い.ブックガイドが硬軟取り混ぜて楽しい&頼もしいのも重要. 読み終わる頃には更に踏み込むための知識と手がかりが手に入っているだろう.

 この後,調査し文章を書き進める上で海図であり母港となった本である.

おだまり,ローズ 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想

 副題の通りの内容.語り口やエピソードの積み重ねに強い影響を受けた.登場人物は皆生き生きとして文章はウィットに富んでおり,読み物としても非常に面白い.個人的には2018年ベスト本.

日の名残り

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 このエモさ,ノーベル賞級!(とても文化的なキャッチコピー)

 イギリスの荒野で文学賞の権威につられて読みはじめた軟弱者はエモの大波に飲まれて語彙を失い,保護されたときにはバスタオルにくるまれ焦点の合わぬ目で「エモい……エモい……」と呟くだけの哀れな生き物になる.執事ものの金字塔.

図説 英国メイドの日常

 豊富な図画を添えてメイドの暮らし,しきたり,当時の文化について書かれている.あたりまえのことだが,年代が書き添えられているのが非常に助かる.

 全般にふくろうの本シリーズは絵や写真が豊富かつそこに対応した挿話が書かれている資料集スタイルなので,「面白そうな設定やエピソードはどんどんつまみ食いする」というスタイルにはもってこいである.もちろん通して読んでも面白い.

英国の上流階級

 貴族のお嬢様を書かないといけないので,貴族の生活とはどのようなものだったか調べた.特にお嬢様は学校に通っている設定なので,そのあたりもケアしたい.

階級にとりつかれた人々

 ここから入った.どういう階級があって,どういう特徴があってというところ,とりあえず出発点の枠は押さえた感がある.

 清潔さ,丁寧さ,慇懃さといった洗練はミドルクラスの特徴であり,アッパークラスおよびアッパーミドルクラスはそれを忌避して線をひこうとした,という部分については(非常に興味深いものの)いわゆる「お嬢様」の通俗的理解と衝突する.これについて今回は我々日本人にとって容易に受容可能な「洗練されたお嬢様」概念を採用した.

イギリス紳士のユーモア

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

 ユーモアについて書かれた頁は実はそんなに多くなく,イギリス紳士の説明に割かれるところが多い.紳士の養成機関としてのパブリック・スクールについての記述あり.

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

大人の教養としての英国貴族文化案内

 著者の思い入れが奔りすぎて話があっちゃこっちゃ行くな……というところはあるが,その熱意で詰め込まれた数多のエピソードにはインスピレーションを掻き立てられた.

図説 英国レディの世界

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

図説 英国レディの世界 (ふくろうの本)

 良妻賢母,ミドルクラスの良い奥様を目指すには,という話が多い.すこしターゲットを外してしまったが無駄ではなかった.

図説 英国貴族の令嬢

 『英国レディの世界』が当たらずとも遠からずだったので貴族のお嬢様ならこちらのほうがテーマに近いかと思い買う.思惑通り.

 地位と敬称,呼称の対応表(伯爵の長女に対してLadyとつけるべきやMissとつけるべきや,等)が見っけもんである. 二次創作で誰が誰を何と呼ぶかというのは非常に気を使われるところであるし,呼び方で人間関係を表現できるので是非に押さえておきたい.

ダウントン・アビー

嵐の予感

嵐の予感

 映像というのは強力で,特に調度や立ち振舞いといった部分が強い.文章で描かれない隅々にまで情報があり,文字で読んだ知識をいい具合に補正・補完してくれる.また,人気のドラマシリーズに今更なに言ってんだという話だがドラマが面白い.アマプラで見られるので実質無料だというのも強い.

パブリック・スクール ――イギリス的紳士・淑女のつくられかた

 著者自身の経験に加えて,学校文学(学園モノ……というとちょっと違うかもだが)を引きながらパブリック・スクールとその内部の習慣や文化について紹介している本.女子のパブリック・スクールについても一章が割かれておりキマシタワーを建てる際の参考になる.

自由と規律 ―イギリスの学校生活

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

 パブリック・スクールが持つ厳しくも素晴らしい特質について著者の経験したエピソードを紹介して書かれている.芯の強いお嬢様を書きたいならぜひ買ったほうが良い.

 やや古い本でしかも著者の少年時代をベースに書かれているので,現代物をやりたいなら注意.私の場合は時代物なのでむしろウェルカムだった.

英国の海軍

 艦これはお船のゲームなので(たぶん).その背景について知識を深めるのは無駄にはならないはず.

女王陛下のユリシーズ号

 何度めかの再読.何度めかの感涙.名作名作アンド名作.

 影響されて同人誌の装丁をかなりハヤカワNVリスペクトな感じにした.あの半端極まりない高さを除いてだが.

Warspite

Warspite (English Edition)

Warspite (English Edition)

 QE級戦艦のHMS Warspiteについて書かれた本の中でも現在容易に入手でき,かつ非常に詳しく書かれたもの.Kindle版が安価.

 私は英語力と根気がゴミなため途中で投げた.だが,冒頭で歴代のWarspiteについて述べられていて,この部分だけでもインスピレーションがモリモリと湧いてくる.元はとった(負け惜しみ).

ダンケルク

 映像のパワーに殴られて「海は……海は広いな……」という感想が残った.ダンケルク撤退が英国民統合の象徴であり誇りでもある(「負け戦」をそう言うあたりが本当にいい)という話もあって,「祖国だ」の一言に心をボコボコにされる.凄い映画だ.

 海による分断,たち現れる戦場の奇跡という構図やラストの盛り上げ方はかなり影響された.

Rule Britannia!

Rule Britannia!

Rule Britannia!

  • The Central Band of the Royal British Legion & Captain David Cole
  • クラシック
  • ¥1500

 作業用BGM.表題曲はもちろん,みんな大好き"The British Grenadiers"や "Scotland the Brave" もあるぞ.

英国の女と女の感情

 百合は語るものではない.

荊の城

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

 読みましょう.

プリンセス・プリンシパル

第1話 case13 Wired Liar

第1話 case13 Wired Liar

 見ましょう.

エディトリアルデザイン

 表紙絵はできる人にお願いしたけど,組版やカバーデザインの仕事は残った.無論,DTPなどやったことはない.

小説同人誌のためのレイアウトデザイン

seiyo-shobo.booth.pm

 神のごとき同人誌.これ一冊で読むに堪える小説同人誌が作れる.DTP用語の説明からしてくれているので最初の一冊に良い.永久保存版である.

 特別付録でInDesign用のクックブックがあってこれがまたスクリーンショット豊富でわかりやすい.InDesignの体験版をダウンロードして途方に暮れた状態からスタートして一時間くらいでカッコいい版面ができる. Adobe CCに入っているようなソフトはどれも高機能で,その分野の概念から掴まねばならない人が一から理解して利用するのは困難である.そのため丸写しで様になる設定例は大変ありがたい.

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

 値札やお品書き等のファシリティ(?)については労力をかけて完璧にするよりも,無難なものを作りたいと思っていたので買った.期待していたことが書いてあった.平易でよい.

その他

夏の夜の夢・あらし

 HMS Arielを出すので.風精エアリエルに関する引用をやりたくて読んだ.しかし,結果としてあまりハマる台詞はなくて見送り.これ以外にもいくつかエピグラフ目当てで古典を読んだけれど,なかなかしっくり来るというのはなかった.しかし古典というやつは読んで見れば「いける,これは今でもいける」というのが結構あるもので,良い機会だったと思う.

艦隊これくしょん -艦これ- コミックアラカルト 舞鶴鎮守府編 十六

 資料というよりはモチベーションに近い物だが大きなリスペクトを込めて.これの最後に載ってる今井哲也先生の漫画が非常に良い.2017夏イベントを漫画にしたものなのだが,道中をほんの数コマでまとめる鮮やかさと,強く気高いWarspiteが良い.奇しくも同じイベント,同じ艦娘がテーマなのでリスペクトせずにはいられない.

 

 いざ同人誌を書いてみると,世の中には知らないことが多いものだと痛感する.図書館などももっと活用すればよかった.