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スワロウテイル人工少女販売処

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)

この前買ったSFライトノベルスワロウテイル人工少女販売処」が大変素晴らしかったので紹介するよ.

だって,SFで人工知能厨二病なんだよ?
ぜんぶあるじゃん,俺の好きな物全部あるじゃん.百合と超能力がないけど.

主人公の美少女は人工生命,黒髪長髪,黒ドレス,武器はメス.さらに規格外(そもそも,キャラクタを全順序なクラスに分ける段階でガチ厨二,そしてその上でこそ生きるダメ押し&予定調和の「規格外」).震えて畏れと共に跪くレベル.
さらに俺の言語中枢を震わせる「赤色機関(アンチシアン)」「水底の魔女(アクアノート)」などの当て字.作者が30代だというのにこのクオリティ.マジで俺あと10年は中学生で居続けられるわ.

(以下にネタバレを含みます)
じゃあSFとしてどうなのよ,というと傘持ちシステム萌え.
前向性健忘自体はメメントや智アフなどでメジャーなネタだし,それによる記憶の断絶を利用して人間をコントロールするネタは小林泰三作品などでもある.でも,本作の場合,記憶共有とインデクシングによるひとひねりが嬉しい.こういうネタの何が面白いって,システムですよシステム.一つ一つは既存の技術,既存の虚構でも,それを組み上げたシステムがオリジナリティを持ち,でかい嘘を実現していく様は素晴らしく面白い.それこそが私にとってのセンスオブワンダーであり,レベルアッパーが俺の心を震わせるのもそのため.こういう与太格好いいシステムが出るSFがいっぱいあるといい.

キャラクタ,設定,シチュエーション,要素要素は限りなくどこかで見たことがある光景ながら,引いて見れば方向がそろっていてひとつの世界が出来ている.萌え属性とシチュエーションが豊富なミームプールがなければ生まれえない,素晴らしい作品だった.